2014年06月30日

睡眠障害(不眠症)とは?

●睡眠障害(不眠症)とは?


●睡眠障害は、広く睡眠に関する病気全般を指す言葉で、夜間の睡眠が障害されるもの、日中の眠気を呈するものが含まれます。

2005年に作られた睡眠障害国際分類第2版では、85の睡眠障害が取り上げられ、その原因に従って病気としての観点から、(1)不眠症(ふみんしょう)、(2)睡眠関連呼吸障害、(3)過眠症(かみんしょう)、(4)概日リズム睡眠障害、(5)睡眠時随伴症(すいみんじずいはんしょう)、(6)睡眠関連運動障害、の6つのグループに大きく分けられています。
 
ここでは、睡眠障害国際分類に従って、睡眠障害について代表的疾患を解説しながら示します。



●(1)不眠症(インソムニア)
 
適切な時間帯に寝床で過ごす時間が確保されているにもかかわらず、夜間に就床してもよく眠ることができず、これによって日中に生活の質の低下がみられる場合に不眠症と診断されます。

寝床で過ごす時間が確保できない場合は、不眠と呼ばず「睡眠不足」または「断眠」と呼びます。
 


夜間の不眠症状には、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠困難があり、不眠によって起こりうる生活の質の低下としては、いらいら感、集中困難、気力低下など精神的悪影響、易(い)疲労感、頭痛、筋肉痛、胃腸の不調など身体的悪影響があります。
 
多くの場合、原因になるようなはっきりとした疾患がない一次性不眠症です。

一次性不眠症で最も多いのは「精神生理性不眠」と呼ばれるもので、眠れないのではないかという不安や恐怖のため慢性的な不眠に陥るものです。
 
身体疾患や精神疾患に合併して、あるいは薬物の使用や中断に伴って起こる場合には二次性不眠症と呼びます。



●(2)睡眠関連呼吸障害
 
睡眠関連呼吸障害は、睡眠中の呼吸障害により睡眠が質的に悪化する睡眠障害です。

閉塞性睡眠時無呼吸(へいそくせいすいみんじむこきゅう)症候群がその代表です。

これは、中年以降の男性に多くみられ、眠ると舌がのどをふさぎ、空気の通りが悪くなるため、ひどいいびきや呼吸停止が起こります。
 

中枢性(ちゅうすうせい)睡眠時無呼吸症候群は、呼吸運動を司る神経機構の機能が悪くなることで、呼吸運動が減弱し停止するために睡眠中に呼吸ができなくなります。
 
いずれの場合も睡眠は浅くなり分断されて、結果として日中の眠気が起こることになります。

高血圧、心疾患、脳血管障害などの危険因子となるので治療が必要です。



●(3)中枢性(ちゅうすうせい)過眠症
 
目覚めているための神経機構が障害されるため、夜しっかり眠っていても、日中に異常な眠気におそわれる病気です。

ナルコレプシー、特発性(とくはつせい)過眠症、反復性(はんぷくせい)過眠症などが中枢性過眠症の代表です。
 
ナルコレプシーでは、日中の眠気だけでなく、笑ったり、びっくりしたりという情動の変化により突然全身の力が入らなくなる情動脱力発作、寝つき際に自発的に体を動かすことのできなくなる睡眠麻痺などの特徴的な症状を伴います。



●(4)概日リズム睡眠障害
 
概日リズム睡眠障害は、1日のなかで何時から何時の時間帯に睡眠をとるかという睡眠のタイミングに関連した睡眠障害です。
 
このグループに含まれるものとしては、夜勤や時差(じさ)地域への急速な移動など、内因性生物リズムに逆らったスケジュールで生活することよって生じる睡眠障害(時差症候群、交代勤務性睡眠障害)、内因性生物リズム自体の変調により、睡眠と覚醒のスケジュールが望ましい時間帯から慢性的にずれてしまう睡眠障害(睡(すい)眠相前進(みんそうぜんしん)症候群、睡眠相後退(すいみんそうこうたい)症候群、非24時間型睡眠・覚醒症候群など)があります。



●(5)睡眠時随伴症

睡眠時随伴症とは、睡眠中に起こる望ましくない身体現象の総称で、正常では睡眠中に起こらないような神経活動亢進によると考えられます。
 
ノンレム睡眠に関連した睡眠時随伴症としては、子どもの「寝ぼけ」といわれているものの多くがこれに相当します。

ぐっすり眠って1〜2時間して、覚醒し歩き回る睡眠時遊行症(すいみんじゆうこうしょう)(夢中遊行(むちゅうゆうこう))、この時に大声を上げて激しい恐怖を示す睡眠時驚愕症(すいみんじきょうがくしょう)(夜驚症(やきょうしょう))などが代表的です。
 


レム睡眠に関連する睡眠時随伴症としては、夢の内容と一致して大声で寝言をいったり、暴力的な異常行動が起こるレム睡眠行動障害が代表で、高齢男性によくみられます。
 

反復孤発性睡眠麻痺(はんぷくこはつせいすいみんまひ)は入眠時または睡眠からの覚醒時に、頻回に睡眠麻痺(金縛(かなしば)り)が起こり、自発的な行動ができないのが特徴です。

これもレム睡眠に関連して起こります。
 
繰り返し悪夢をみて、激しい不安や恐怖を伴って覚醒する悪夢障害もレム睡眠に関連した睡眠時随伴症です。



●(6)睡眠関連運動障害
 
夜間睡眠中に体の余計な動きが生じることで、それが刺激になって睡眠が障害されるグループです。

代表は、むずむず脚症候群と周期性四肢運動障害です。
 
むずむず脚症候群では、下肢にむずむずした異常感覚とともに、常に脚を動かしたいという強い欲求が夕方や夜間安静時に出現します。

眠ろうと寝床に入るとこうした異常感覚のために寝つけず、眠っても睡眠が安定しません。
 
周期性四肢運動障害は、周期的な不随意運動が反復して起こるため、それが刺激になって睡眠が浅くなったり、分断されるのが特徴です。
 
他に睡眠中に足がつる下肢こむらがえり、歯ぎしりなどがこのグループに分類されます。



以上


posted by ホーライ at 03:23| 心身症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月29日

全身性エリテマトーデスとはどんな病気かとはどんな病気か

●全身性エリテマトーデスとはどんな病気か

全身性エリテマトーデス(SLE)は、細胞の核成分に対する抗体を中心とした自己抗体(自分の体の成分と反応する抗体)が作られてしまうために、全身の諸臓器が侵されてしまう病気です。

よくなったり悪くなったりを繰り返し、慢性に経過します。

1万人に1人くらいが発病し、とくに20〜30代の女性に多く、男女比は1対10です。
 

多くの臓器が侵されるため臨床所見も多彩で、関節症状、皮疹(蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)、円板状(えんばんじょう)紅斑)、中枢神経病変、腎障害、心肺病変、血液異常などがみられます。

とくに、中枢神経病変、腎障害があると命にかかわる危険性が高くなります。



●全身性エリテマトーデスの原因は何か
 
SLEは、抗体を作るはたらきをしているBリンパ球が異常に活性化し、それに伴い産生された自己抗体によって、特有の臓器病変が生じると考えられています。
 
SLEの原因はまだよくわかっていませんが、動物モデルにみられるように、複数の遺伝的要因が関与することは確実だと思われます。

これは、ヒトでも一卵性双生児でのSLE発症の一致率が約70%と高いことからも裏づけられます。
 
こうした遺伝的素因に、何らかの外因(感染症や紫外線など)が加わって発症するものと考えられています。

また、女性に圧倒的に多いことから女性ホルモンが関与している可能性も示唆されています。



●全身性エリテマトーデスの症状の現れ方
 
全身の症状として、発熱、全身倦怠感、易(い)疲労感、食欲不振、体重減少などがみられます。

また、皮膚や関節の症状はこの病気のほとんどの患者さんに現れます。

皮膚・粘膜の症状
 
蝶型紅斑(頬にできる赤い発疹で、蝶が羽を広げた形に似ている)が特徴的です。

また、顔面、耳、首のまわりなどにできる円形の紅斑で、中心の色素が抜けてコインのようになるディスコイド疹もみられます。

SLEでは日光過敏を認めることが多く、強い紫外線を受けたあとに、皮膚に発疹、水ぶくれができ、発熱を伴うこともあります。

また、手のひら、手指、足の裏などにできるしもやけのような発疹も特有な症状です。

その他、大量の脱毛や、口腔内や鼻咽腔(びいんくう)に痛みのない浅い潰瘍ができたりします。



関節の症状
 
とくに、関節炎で発病する場合には、手指にはれや痛みがあるために関節リウマチと間違えられることもありますが、SLEでは関節リウマチと異なって骨の破壊を伴うことはほとんどありません。



臓器の症状
 
腎症状としては、急性期に蛋白尿がみられ、尿沈渣(ちんさ)では赤血球、白血球、円柱などが多数出現するのが特徴です(テレスコープ沈渣)。

糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)(ループス腎炎)と呼ばれる腎臓の障害は約半数に現れ、放っておくと重篤となり、ネフローゼ症候群や腎不全に進行して透析が必要になったり、命にかかわったりすることがあります。
 
心臓や肺では、漿膜炎(しょうまくえん)(心外膜炎(しんがいまくえん)や胸膜炎(きょうまくえん))の合併が約20%に起こります。

間質性肺炎(かんしつせいはいえん)、肺胞出血、肺高血圧症(はいこうけつあつしょう)は頻度としては低いですが、難治性です。
 
腹痛や吐き気がみられる場合には、腸間膜の血管炎やループス腹膜炎(ふくまくえん)、ループス膀胱炎(ぼうこうえん)に注意が必要です。


中枢神経の症状
 

中枢神経症状(CNSループス)もループス腎炎と並んで、SLEの重篤な症状です。

多彩な精神神経症状がみられますが、なかでも、うつ状態・失見当識(しつけんとうしき)・妄想などの精神症状とけいれん、脳血管障害が多くみられます。



その他
 

貧血、白血球減少、リンパ球減少、血小板減少などの血液の異常もよくみられます。

また、抗リン脂質抗体という抗体がある場合は、習慣性流早産、血栓症、血小板減少に基づく出血症状などの症状を伴い、抗リン脂質抗体症候群と呼ばれています。


posted by ホーライ at 03:06| 自己免疫疾患 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月26日

脊髄小脳変性症とは?

1.脊髄小脳変性症とは

歩行時のふらつきや、手の震え、ろれつが回らない等を症状とする神経の病気です。

動かすことは出来るのに、上手に動かすことが出来ないという症状です。

主に小脳という、後頭部の下側にある脳の一部が病気になったときに現れる症状です。

この症状を総称して、運動失調症状と呼びます。

この様な症状をきたす病気の中で、その原因が、腫瘍(癌)、血管障害(脳梗塞、脳出血)、炎症(小脳炎、多発性硬化症)、栄養障害ではない病気について、昔は、原因が不明な病気の一群として、変性症と総称しました。

病気によっては病気の場所が脊髄にも広がることがあるので、脊髄小脳変性症といいます。

脊髄小脳変性症は一つの病気ではなく、いろいろな原因でおこる、この運動失調症状をきたす変性による病気の総称です。

よって、その病気の原因も多岐に及びます。

現在では、脊髄小脳変性症の病気の原因の多くが、わかってきています。

しかし、一部まだ原因の解明されていない病気も残されています。

これらの病気の解明には多くの患者さんのご協力を必要とします。





2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

多系統萎縮症という病気では、病型により程度は異なりますが、運動失調症が、その症状の中心になる場合があります。

そこで多系統萎縮症の一部も脊髄小脳変性症とされます。

この多系統萎縮症を含めて、脊髄小脳変性症の患者さんは、全国で3万人を超えています。

その中で、遺伝歴のない脊髄小脳変性症(多系統萎縮症とかオリーブ橋小脳萎縮症といわれます)が最も多く、約2/3をしめます。

1/3は遺伝性の脊髄小脳変性症です。

遺伝性の脊髄小脳変性症では、それぞれ遺伝子別に番号がついています。

日本で多いのはSCA3、 6、 31型です。

このうちSCA3型はマチャド・ジョセフ病という呼び名で呼ばれます。

歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)はお子さんから、大人の方まで、本邦で比較的、高頻度に認められます。

小児の脊髄小脳変性症のなかで多いのは“眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早発型失調症”(EAOH/AOA1)があります。

成人の遺伝性の脊髄小脳変性症の大多数は原因遺伝子が判明しています。

小児に関しては、種類も多様で、多くの原因遺伝子が同定されています。

しかし、未だ不明な病気も多く存在しています。




3. この病気はどのような人に多いのですか

この病気は接触などで他人にうつる病気ではありません。

約2/3が遺伝性ではありません(孤発性)。

孤発性の場合、生活習慣や食習慣との間に、明らかな関係は知られていません。

また、病気の進行を左右するような食習慣などもありません。

遺伝性の場合は、親子で伝わる優性遺伝を取る病気や、ご兄弟・姉妹でのみ病気がでる劣性遺伝のものが知られています。




4. この病気の原因はわかっているのですか

遺伝性の病気の多くは原因となる遺伝子と、その異常が決められています。

現在は、その原因遺伝子の働きや、病気になるメカニズムに応じて病気の治療方法が研究されています。

脊髄小脳変性症の多くには、遺伝子は異なっていても、それらに共通する異常や病気のメカニズムが認められています。

それらの共通の異常を目標とした治療方法の検討も行われています。全く原因がわからなかった時代とは大きく異なってきています。



5. この病気は遺伝するのですか

脊髄小脳変性症は、遺伝性のものと遺伝性でないものに分けられます。

脊髄小脳変性症の約1/3の方が遺伝性です。

遺伝性のものは、遺伝様式により、優性遺伝性と劣性遺伝性に分かれます。

優性遺伝性の病気は、お子様につたわることがあります。


一方、劣性遺伝性の病気はお子様に伝わることは、まずありません。

遺伝性と、非遺伝性の病気の区別は、多くの方では、症状や画像検査によって可能です。

そのため、症状や画像検査などから、特徴がそろっている場合は、両者の区別のための遺伝子検査は必ずしも必要ありません。

しかし、一部、両者の区別が難しい場合があります。

特に小脳皮質変性症という診断の場合は、症状や画像検査だけでは遺伝性の病気との区別が困難です。

また遺伝性脊髄小脳変性症の正確な病型診断には、遺伝子検査が必要な場合があります。

本症の遺伝子検査は保険適応になっていないので、一部実費負担が必要となる場合があります。




6. この病気ではどのような症状がおきますか

主な症状は、起立や歩行がフラツク、手がうまく使えない、喋る時に口や舌がもつれるなどの症状です。

脊髄小脳変性症では、これらの症状がたいへんゆっくりと進みます。

このような、運動が上手に出来ないという症状を総称して運動失調症と言います。

脊髄小脳変性症として総称されている病気では、それぞれの種類で、運動失調以外にもさまざまな症状を伴います。




7. この病気にはどのような治療法がありますか

多くの脊髄小脳変性症で病気の原因が判明しました。

その原因に基づき、多くの研究者が研究を進めています。

ヒトと同じような機序で同じ症状を出す動物(モデル動物)も作られています。

それらのモデル動物を使って症状の進行を妨げる薬剤も多数報告されています。

しかし、現時点では、残念ながら、それらの薬剤がヒトで有効である事は確かめられていません。

ヒトでの安全性やヒトでの試験の難しさが壁になっています。

また患者さんの数が、高血圧や、糖尿病に比べて少ないことも壁になっています。

日本は、このような患者さんの数の少ない疾患にも、精力的に取り組んでいる国の一つです。

今後、必ず、有効性のある薬剤が開発されることが期待されます。

病気の進行を止める薬の開発には、多くの患者さんのご協力が不可欠です。

現時点では、お困りになっている症状を和らげる治療法が知られています(対症療法と言います)。

運動失調に対して、甲状腺ホルモンの刺激剤である、セレジスト(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン誘導体)が使われます。

その他、足のつっぱり感、めまい感、などに対して、症状に応じて薬で治療します。




8. この病気はどういう経過をたどるのですか

症状は、とてもゆっくりと進みます。

進み方は、同じ病気でも、お一人お一人で差があります。

急に症状が悪くなることはありません。

一般に痛みは伴いません。

病気が進むと、一部では呼吸や血圧の調節など自律神経機能の障害や、末梢神経障害によるシビレ感などを伴うことがあります。

病気が進んでも、コミュニケーションは十分に可能ですし、極端な認知症は伴いません。


以上

posted by ホーライ at 07:00| 中枢系の病気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月25日

アレルギー性鼻炎とはどんな病気か

●アレルギー性鼻炎とはどんな病気か

抗原と抗体が鼻の粘膜で反応して、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりを起こすのがアレルギー性鼻炎です。

アレルギー反応(I型)で起こる病気には、ほかに気管支喘息(きかんしぜんそく)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎(けつまくえん)などがあります。

これらアレルギー性の病気はしばしば同時に起こります。




●原因は何か
 
原因になる物質(抗原)にはいろいろな種類があり、主なものとしてはハウスダスト(ダニなどの家のほこり)、スギ花粉、イネ科花粉、ブタクサ花粉、真菌(カビ)、ペットとして飼っているイヌやネコの毛があります。
 
これらの抗原は、息を吸うと鼻のなかに入り(吸入抗原)、鼻の粘膜にある抗体と出合いアレルギー反応(I型)を起こします。

抗体はIgE抗体と呼ばれ、アトピー体質のある人の体内でつくられます。

このIgE抗体は、鼻の粘膜で肥満細胞(ひまんさいぼう)という細胞と強く結びつく性質をもっています。
 


アトピー体質のある人が、各種吸入抗原を吸うと抗原抗体反応が鼻の粘膜で起こり、肥満細胞からヒスタミンなどの物質が放出されます。

放出されたヒスタミンなどの物質は、鼻の粘膜を刺激してくしゃみ、鼻みず、鼻づまり、鼻のかゆみを起こします。

したがってスギ花粉症もアレルギー性鼻炎に属します。

大気汚染や食生活の変化によりアレルギー性鼻炎は増えています。




●症状の現れ方
 
ハウスダスト(ダニなど)とスギ花粉によるアレルギー性鼻炎の患者さんが最も多くなっています。

家のほこりによるアレルギー性鼻炎の特徴は、一年中くしゃみ、鼻みず、鼻づまりが続くことです(通年性アレルギー性鼻炎)。

鼻づまりが強く、くしゃみや鼻みずを感じない場合や、くしゃみと鼻みずが強く、鼻づまりを感じない場合などがあります。
 
くしゃみは発作性に起こることが多く、一度起こると何度も続けて出ます。

ハウスダストのアレルギー性鼻炎の患者さんは、しばしば気管支喘息やアトピー性皮膚炎を併せもっています。
 

スギ花粉症の特徴は、毎年2〜4月(スギ花粉が飛ぶ季節)にかけてくしゃみ、鼻水、鼻づまりを起こします(季節性アレルギー性鼻炎)。

スギ花粉が飛ばない季節に鼻症状はありません。

アレルギー性結膜炎をいっしょにもっている人が多く、鼻症状以外に目のかゆみが強く起きます。



●検査と診断
 
アレルギー性鼻炎の診断には、鼻みずのなかにアレルギーの細胞(好酸球(こうさんきゅう))があるかどうか、抗原を皮膚に注射してアレルギー反応(I型)が起こるかどうかをみる皮膚反応、血液中のIgE抗体の測定、抗原を鼻に入れてアレルギー反応(I型)が起こるかどうかをみる鼻誘発テストが行われます。
 
まぎらわしい病気にかぜがあります。

アレルギー性鼻炎には鼻のかゆみがあり、またかぜの場合に出る黄色や緑色の鼻汁(びじゅう)でなく、水性の鼻みずが出る特徴があります。

かぜの場合には、アレルギー性鼻炎で行われる検査はすべて陰性です。




●アレルギー性鼻炎に気づいたらどうする
 
原因がハウスダスト(ダニなど)の場合には、家のなかを掃除し清潔にすることが重要です。

スギ花粉症の場合には、工夫されたマスクやメガネが市販されています。
 
これらのことを行っても鼻症状があり、生活に支障がある場合には耳鼻咽喉科を受診します。

どのような症状がどの程度あるか、原因抗原の違いにより治療法が異なりますので、専門医の指示に従ってください。



以上
posted by ホーライ at 07:13| アレルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月22日

アルツハイマー病とはどんな病気か

アルツハイマー病は、1906年にドイツのアルツハイマーによって初めて報告されました。

最初の症例は51歳の女性で、嫉妬妄想(しっともうそう)と進行性の認知症を示し、大脳皮質に広範に特有な変性病変が見つかり、従来知られていない病気であることがアルツハイマーによって報告されたのです。


この症例は初老期の発病でしたが、アルツハイマー病は高齢者に発病するほうが多く、高齢者の認知症では最も頻度が高い疾患で、全体の50〜60%を占めます。
 
アルツハイマー病では、多くは物忘れで始まります。

それが徐々に目立つようになり、見当識(けんとうしき)の障害、判断能力の障害なども加わり、認知症が着実に進行して最後は寝たきりになり、5〜15年の経過で肺炎などを合併して亡くなります。




●アルツハイマー病の原因は何か

アルツハイマー病については、1980年ごろの「コリン仮説」以来の活発な研究にもかかわらず、いまだ原因は不明のままです。

「コリン仮説」というのは、アルツハイマー病の大脳ではアセチルコリンという神経伝達物質が減少しているために起こるという仮説ですが、原因解明には至りませんでした。

しかし、これは治療上大きな貢献をしました。現在、日本で使用されているドネペジル(アリセプト)という薬剤は、アセチルコリンを分解するコリンエステラーゼを阻害することにより、脳内のアセチルコリンを増やす作用をもっています。
 


アルツハイマー病の脳には、ベータアミロイドと呼ばれる蛋白からなる老人斑とタウ蛋白からなる神経原線維変化がたくさん出現し、そのために神経細胞が脱落し、認知症が起こります。

しかし、なぜベータアミロイドやタウ蛋白が脳に特異的にたまるかということに関しては多くのことがわかってきましたが、原因解明にまでは至っていません。
 
また、家族性アルツハイマー病ではいくつかの遺伝子異常が明らかにされていますが、大部分を占める孤発性(こはつせい)(家族に同じ病気の人がいない)のアルツハイマー病では遺伝子異常は明らかではありません。




●アルツハイマー病の症状の現れ方
 
多くは物忘れで始まります。同じことを何回も言ったり聞いたり、置き忘れ・探し物が多くなって、同じ物を買ってきたりするなど記憶障害が徐々に目立ってきます。

それとともに、時や場所の見当識が障害され、さらに判断力も低下してきます。

意欲低下や抑うつが前景に出ることもあります。


 
早いうちは物忘れを自覚していますが、徐々に病識も薄れてきます。

そのうち、物盗られ妄想や昼夜逆転、夜間せん妄(もう)、徘徊、作話(さくわ)などの認知症の行動・心理学的症状(BPSD)が加わることが多く、介護が大変になります。
 

さらに進行すると、衣類がきちんと着られない、それまでできていたことができなくなるなど、自分のことができなくなり、種々の介助が必要になってきます。

また、トイレの場所がわからなくなったり、外出しても自分の家がわからなくなってきます。

さらに、自分の家族がわからなくなり、動作が鈍くなり、話の内容もまとまらなくなります。
 
そして、歩行もできなくなり、食事も自分でできなくなり、全面的な介助が必要になって、ついには寝たきりとなり、肺炎などの合併症で亡くなってしまいます。
 
進行のしかたは人により異なりますが、数年から十数年の経過をとります。



●アルツハイマー病の検査と診断
 
認知症を診断したあと、特徴的な臨床像(多くは60歳以上に起こる記憶障害を中心とする緩やかに進行する認知症、早期の病識の欠如、取り繕いを主体とする特有な人格変化)が診断に役立ちます。
 
補助診断で最も有用な検査は脳画像で、CTやMRIでは海馬(かいば)領域に目立つびまん性脳萎縮、SPECTでは頭頂領域や後部帯状回(たいじょうかい)中心の血流低下が特徴的です。

血液などの一般検査には異常はありません。

髄液検査が行われることもありますが、その際にはベータアミロイドの低下やタウ蛋白の上昇がみられます。
 
最近では早期診断が重視されており、健忘(けんぼう)を中心とする軽度認知障害(MCI)の50〜70%が、のちにアルツハイマー病に進展することが知られているので、この時期に治療的介入をすることが大切です。




●アルツハイマー病の治療の方法
 
薬物療法として現在、使用できるのはドネペジル(アリセプト)等ですが、これは進行を遅くする効果を期待して使用されています。

同じコリンエステラーゼ阻害薬のガランタミンとリバスチグミン等があります。

また、ベータアミロイドをとり除くワクチンの開発が進められています。
 
一方、非薬物療法もいろいろな試みがなされています。

これらも進行を遅くしたり、BPSDを軽減するのに役立つことが期待されています。


以上


posted by ホーライ at 11:17| 中枢系の病気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月19日

感冒(かぜ)とはどんな病気か

●感冒について

●感冒(かぜ)とはどんな病気か

肺に出入りする空気の通り道を気道といいますが、鼻や口から声帯までを上気道、その奥の気管支を下気道といいます。

かぜは上気道の炎症性の病気なので上気道炎(じょうきどうえん)ともいいます。

下気道の炎症は気管支炎(きかんしえん)であり、さらに奥にある肺の炎症は肺炎(はいえん)ですが、単純な気管支炎までをかぜという場合が多いようです。

「原因は何か」に示すかぜウイルスが鼻や口から侵入して上気道の粘膜の細胞に吸着・侵入(これを感染という)すると、滲出性(しんしゅつせい)の炎症、すなわち粘液性の分泌物が出て「症状の現れ方」に示す症状が起こります。

白色や透明感のある粘液が主であればウイルス性の炎症ですが、痰に色がついている場合は細菌の2次感染に進行しているので、抗菌薬治療が必要になります。




●感冒の原因は何か
 
かぜの原因の9割以上はウイルス感染ですが、一部に溶連菌(ようれんきん)などの細菌やマイコプラズマ、クラミジアが関係します。

寒冷や乾燥などはかぜの誘因ですが、厳寒期よりも晩秋や春先など1日の気温差が激しい時期にかぜが多いこともよく知られています。
 

かぜを起こすウイルス(かぜウイルス)を詳しく数えれば100種類以上もありますが、代表的なものは約10種類です。

すなわち、・季節にあまり関係なく主に鼻かぜを起こすライノウイルスやコロナウイルス・夏を中心に腹痛、下痢などおなかの症状を伴いやすいエンテロウイルスやエコーウイルス、コクサッキーウイルス・春や秋のかぜに多いアデノウイルスとパラインフルエンザウイルス・冬に多くて子どもに重症の肺炎を起こすことのあるRSウイルス・インフルエンザウイルス(インフルエンザウイルス肺炎)などが代表です。
 

かぜの多くは季節との関連が強いのですが、かぜの誘因には乾燥や寒冷、温度変化などのほかに、疲労や睡眠不足などもあります。

もちろん、かぜのほとんどは感染症ですから、周囲にかぜが流行していることが最大の誘因であり、原因であるといえるでしょう。




●感冒の症状の現れ方
 
ウイルスの種類によって症状は少しずつ異なります。

通常、体のだるい感じや寒気、のどや鼻の乾燥感などが1〜2日続いたあと、のどの痛みや鼻水、鼻づまり、頭痛、発熱などが現れます。

そのまま治ることも多いのですが、引き続いて咳(せき)や白っぽい粘液のような痰が出たりします。

咳や痰が出ることは、炎症が下気道へも広がり始めたことを意味しており、発熱も含めて症状はさらに強くなります。
 

しかし、これらの症状は侵入したウイルスに熱を加えて退治したり、粘液に溶かし込んで弱らせながら痰として体外に排出したりする正常な防御反応ですから、体力を損うような症状でなければむやみに解熱したり咳を鎮(しず)めすぎたりするのは考えものです。
 
ただ、ウイルスを退治するために体内で生産される物質(炎症性サイトカインなどという)は頭痛やだるさ、鼻水、のどの痛み、高熱、食欲不振などの副反応を引き起こします。

小さな子どもでは、腹痛や下痢、嘔吐などの全身症状が出ます。

こうした体力を弱らせる症状は抑える必要があり、その治療(解熱薬、鎮痛薬、整腸薬、点滴など)を対症療法といって、かぜの大切な治療法のひとつです。
 


ところで、ヒトは年に何回くらいかぜをひくのでしょうか。

子どもは年に平均4回以上、大人は2回以上とか、5歳以下は年8回以上、その母親は5回以上、父親も4回以上とする統計などがありますが、軽いかぜのことは忘れやすいので、それ以上かもしれません。




●感冒の検査と診断
 
かぜの症状は誰でもわかりますが、どのウイルスが原因なのか、細菌によるかぜなのかの判別は医師にも難しいので、単なるかぜでも診察は綿密に行われます。

最初に病歴や、どんな症状がいつから起こり、どのように変化したか、市販薬をのんだ場合はどのように変化したか、まわりに似た症状の人はいないか、などが聞かれます。
 

診察では、のどや扁桃(へんとう)に赤みや斑点がないか、白くなって(白苔(はくたい))いないか、黄色い化膿がないかなどを診(み)ます。

また、首のリンパ節のはれ、眼や鼻、皮膚の異常なども調べます。

肺炎や気管支炎などへの広がりを確かめるためには、聴診器で肺の音を聞きます。
 

ウイルスや細菌の種類によって症状や体に現れている変化(所見)が違うのでこのように診察するのですが、正確には鼻の奥やのどを綿棒でこすり、そのなかにどのようなウイルスがいるのか、あるいはそれぞれのウイルスに特有な部品(特異抗原(とくいこうげん))が含まれているかどうかを調べます。
 

場合によっては血液をとって白血球の数を調べたり(ウイルスによる場合は通常減り、細菌による場合は増える)、炎症反応(CRPなど)を調べたりします。

どのウイルスに対する免疫(抗体)が増えているのかを調べることもありますが、抗体は治るころになってようやく増えるので、具合がよくなってから血液検査をすることが多いのです。

また、肺炎になっていないかどうかを確認するために胸部X線検査を行います。
 

かぜと似た他の病気が隠れていることがあり、それらの有無について調べることを鑑別診断といいます。

区別すべき最大の病気は、上気道では花粉症(かふんしょう)などのアレルギー、下気道では気管支炎や肺炎、肺結核(はいけっかく)、肺がんなどです。

これらの多くは、かぜとは症状がやや違って強かったり長く続いたりするので、その場合はすぐ医師に相談してください。





●感冒の治療の方法
 
かぜの治療は大きく2つに分けられます。

「症状の現れ方」で述べた、体力を弱らせてしまうような症状を抑える対症療法がそのひとつです。
 

解熱薬、鎮痛薬、抗炎症薬、うがい薬、整腸薬、点滴などですが、解熱成分、鎮痛成分、抗炎症成分などをひとつの錠剤や散剤にまとめた総合感冒薬がその代表です。

総合感冒薬には多くの種類があり、とくに鼻みずを抑えるもの、頭痛を抑えるものなど、少しずつ違うので、薬局の薬剤師に相談してください。
 

もうひとつは原因療法です。

かぜの原因であるウイルスや細菌(ウイルス感染に続いて発症することが多い)を直接退治する根本的な治療です。

細菌に効く抗菌薬はたくさんありますが、インフルエンザウイルス以外のかぜウイルスに効く薬はまだありません。

重症になりやすいRSウイルスや心臓の合併症が出やすいコクサッキーウイルスなどは、とくに治療薬がほしいものです。
 

漢方薬はどうでしょうか? 

市販の感冒薬にも漢方成分を配合した薬があります。

実は近年、漢方薬の成分が、「症状の現れ方」で述べた炎症性サイトカイン(たくさんの種類がある)をさまざまに調節して、かぜやインフルエンザの諸症状を鎮めることがわかってきました。

経験的につくられてきた漢方薬のはたらく仕組みが、実は合理的であることが科学的に解明され始めたのです。

解明がさらに進めば、漢方薬がもっと使われるようになると思われます。





●感冒(かぜ)に気づいたらどうする
 
かぜは通常、すぐに受診する必要はありません。

安静や市販の感冒薬で治ることが多いからです。

自宅で保温と保湿を十分にし、栄養と睡眠をしっかりとれば、数日で治ります。
 
しかし、一部の人では気管支炎や肺炎に進んだり、心不全にまで進んだりします。

どのような人がそうした合併症を起こしやすいのでしょうか? 

実は、次のインフルエンザのワクチンを打つべき人としてあげられている人たちがそうなのです。
 
すなわち、おおむね65歳以上の高齢者、老人ホームなどの施設で集団生活をしている人、慢性の肺の病気や心臓病の人、糖尿病や腎臓病などで治療を受けている人、アスピリンによる治療を受けている小児、妊娠14週め以降がインフルエンザの流行期に該当する妊婦などです。

こうした人々はそれ以外の人に比べてかぜやインフルエンザが重症化しやすく、肺炎などに進みやすいので、早めに医師の診察を受けてください。


posted by ホーライ at 06:58| 感染症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月16日

インフルエンザとはどんな病気か(その2)

●インフルエンザとはどんな病気か(その2)


●インフルエンザの症状の現れ方
 
インフルエンザは、潜伏期が極めて短いのが特徴です。

感染して1〜2日後に体のだるい感じや寒気、のどや鼻の乾いた感じ(前駆(ぜんく)症状という)が出ますが、その時間は短く、突然38〜40℃にも及ぶ高熱が出て、強いだるさや消耗感、筋肉痛、関節痛などが出ます。

普段健康な若い人でも寝込んでしまうほどの症状が3〜5日も続きます。

解熱薬などで解熱してもしつこく何度も再発熱し、体力の消耗はさらに強くなります。
 
発症の3〜5日後ころに急に解熱して起き上がれるようになりますが、体力の回復には1〜2週間が必要です。

気力の回復にも意外と時間がかかります。

ところが、高齢者や普段から治療を要する慢性の病気をもっている人、妊婦や年少者などではこれだけにとどまらないことが多いのです。

発病の早期から気管支炎や肺炎、さらには脱水症状や心不全、呼吸不全を合併しやすく、不幸な結果になる人も出てきます。

そうした状況に陥るまでの時間が極めて短いのがインフルエンザの特徴で、早めの対応が求められます。




●インフルエンザの検査と診断
 
流行の初期にはインフルエンザの診断は意外に難しいものです。

医師はまず病歴を詳しく聞き出しますが、自分の周囲の流行状況を含めて前項の「感冒(かんぼう)(かぜ)」の場合と同じようなことが質問されます。

診察も「感冒」と同じ手順ですが、インフルエンザでは最近、迅速検査が飛躍的に進歩しました。
 
これは、鼻の奥やのどなどを綿棒でこすり、そのなかにインフルエンザウイルスだけがもっている特有な部品(特異抗原(とくいこうげん))が含まれているかどうかを10〜15分という短時間で調べる検査です。

ただし、症状が出て3日目以降にはインフルエンザウイルスが体内で減り始めるので、発症後48時間までに検査を受けないと確実な診断ができません。

インフルエンザでも早期受診、早期診断が大変重要です。
 
インフルエンザは感冒より重症なので、血液検査やX線検査の回数が増えます。

インフルエンザの場合にも他の似た病気が隠れていることがあります。

区別すべき最大の病気は他の感冒、肺炎などで、それらとの区別は極めて重要です。

肺結核(はいけっかく)や肺がんであることもあるので、検査が必要といわれたらしっかり受けてください。



●インフルエンザの治療の方法
 
インフルエンザの治療も大きく2つに分けられます。

対症療法がそのひとつですが、症状が感冒より強い分、しっかりと行う必要があります。
 
一部の解熱薬が乳幼児の脳炎や脳症の発症に関連しているのではないかといわれていますが、まだ明確ではありません。

ただ、否定できるわけではないので、疑わしい薬剤については気をつけるべきです。

それらのなかで安全性が高い解熱薬はアセトアミノフェンです。
 


原因療法では、数年前からインフルエンザウイルスに直接効く薬が使われています。

インフルエンザウイルスがヒトの細胞に感染する最初の過程を抑えるアマンタジン(シンメトレル)、複製された子どものウイルスが細胞から出て行く過程を抑えるザナミビル(リレンザ)とオセルタミビル(タミフル)です。
 
後二者については、有効成分をまったく含まない薬(プラセボ)と効果を比較した試験で、はるかによく効くことが確かめられました。

肺炎などの重症の合併症を併発する率もはるかに低いことが確かめられましたが、直接ウイルスに効く薬のため、ウイルスが体内で減り始める3日目以降には効き目が極端に落ちてしまいます。

インフルエンザの治療に関しても早期治療が重要です。



●インフルエンザに気づいたらどうする
 
インフルエンザでは早期受診、早期診断、早期治療開始が重要であることを力説してきました。

合併症を併発しやすい人や重症化しやすい人ではとくに重要です。

「感冒(かぜ)」の項でインフルエンザワクチンを打つべき人としてあげた人たちは、ワクチンを打って予防するだけでなく、発症したらすぐに医師の診察を受けることが大切です。




●インフルエンザの予防の方法
 
予防の基本はワクチンの接種です。

ワクチンはかかるのを防ぐのではなく、重症化を抑えるものであることもあって、いまだにインフルエンザワクチンは効かないと思っている人もいますが、ワクチンの効果は内外ですでに実証されています。
 
海外では20万人以上を対象に、ワクチンを打った人と打たなかった人とに分けて調査した成績が複数あります。

いずれもワクチン接種によって、インフルエンザや肺炎による入院患者数が30〜60%減り、死亡者数が50〜70%減っただけでなく、脳血管疾患(脳出血や脳梗塞(のうこうそく)など)や心疾患(心筋梗塞(しんきんこうそく)や心不全など)による入院患者数と死亡者数が明らかに減っていました。

インフルエンザは、肺炎以外にそれらの病気をも誘発していたのです。
 
米国では、肺炎の原因菌として最も多い肺炎球菌に対するワクチンも普及していますが、2つのワクチンを打つとさらに効果のあることが実証されています。

肺炎球菌ワクチンを打つべきとしてすすめられているのは、インフルエンザワクチン接種をすすめられている人とほとんど重なります。

日本でも普及し始めているので、医師に相談してください。


以上



posted by ホーライ at 06:00| 感染症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月15日

百日咳とはどんな病気か?

●百日咳とはどんな病気か
 
間隔の短い咳(せき)が連続して起こり、その咳が文字どおり長い期間続く病気です。


●百日咳の原因は何か
 
百日咳菌という細菌の感染によります。咳は、菌がつくる毒素によるものです。



●百日咳の症状の現れ方
 
潜伏期間は約1週間で、感染者の痰やつばから感染します。

まず、普通のかぜ症状が1〜2週間続きます(カタル期)。

その後、次第に間隔が短く連続して起こり、息を吸う時にヒューという音が出る特有の咳が認められるようになります(痙咳期(けいがいき))。

ただし、3カ月未満の乳児では特有の咳が認められず、単に息を止めたり(無呼吸発作)、皮膚の色が悪くなったりするだけのこともあります。

次第に咳が減り(回復期)、全経過1〜3カ月で回復します。
 
なお、近年、三種混合ワクチン接種終了後、長期間経っている学童期以降の子どもを中心に、長引く咳により百日咳と診断される例が増えています。



●百日咳の検査と診断
 
痙咳期の特徴的な咳の発作によりこの病気が疑われます。

また、百日咳菌を培養する検査や血液検査を行うことがあります。



●百日咳の治療の方法
 
百日咳菌に効果のあるマクロライド系の抗生剤を内服しますが、痙咳期にはあまり効果が期待できず、菌の排出期間を短くすることが主な目的になります。

重症例では、毒素に対して効果の期待できる免疫グロブリンの注射を行うことがあります。
 
合併症としては、肺炎、けいれん、脳症などがあります。

脳症は、重症になりやすい2カ月未満の乳児のおよそ1%にみられます。
 
現在行われている三種混合ワクチンはこのような重症の合併症を予防する効果が高いので、早めにワクチンを接種することが大切です。



●百日咳に気づいたらどうする
 
三種混合ワクチンの接種歴がなく、発作のような咳が長く(1週間以上)続く時は早めに医療機関を受診してください。

以上
posted by ホーライ at 23:51| 感染症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月14日

インフルエンザとはどんな病気か?

●インフルエンザについて


●インフルエンザとはどんな病気か
 
インフルエンザウイルスの感染による炎症です。

ヒトからヒトへ感染しやすく、数年に一度大流行が起こります。

また、気管支炎や肺炎だけでなく、心不全や脳症などを併発し、死亡率の高い病気です。

高齢になるほど、および年齢が低いほど死亡率が高く、大流行の時には日本でも数万人、あるいはそれ以上が死亡しています。
 


インフルエンザウイルスはヒトの体内で爆発的に増えます。

ウイルスは約8時間で100倍に増えるので、1個のウイルスは24時間後には100万個になります。

数千万個にまで増えると症状が現れるので最初に数十個のウイルスに感染すると約1日後には症状が出始めます。

潜伏期(感染してから症状が出始めるまでの時間)が極めて短いわけですが、これがインフルエンザの大きな特徴であり、爆発的に広がる原因のひとつです。
 


インフルエンザウイルスはいつまで体内で増加し続けるのでしょう。

実は感染後2〜3日でウイルスの数は最大になり、その後は免疫抗体ができるため、増えた時と同じような速度で減り始めます。

感染して5〜6日後には体内からインフルエンザウイルスはほとんどいなくなりますが、多くの場合はまだ発熱が続いています。

ウイルスを退治するために役立つ物質(炎症性サイトカイン)が過剰につくられるため、症状を持続させるからだといわれています。



●インフルエンザの原因は何か
 
ヒトに感染するインフルエンザウイルスにはA型、B型、C型の3つがあります。

A型とB型は重症になりやすく、とくにA型ではウイルスの表面にあるスパイク(感染の際に役立つとげや爪のようなもの)が時々姿を大きく変えるためにワクチンが効かなくなります。

これを抗原変異(こうげんへんい)による新型(あるいは亜型(あけい))の出現といいますが、10〜30年ごとの新型の出現時には、大部分の人が新型への免疫をもたないために大流行となり、多数が死亡します。

 
最も有名なのは1910年代後半のスペインかぜです。

青壮年から高齢者まで世界中で4000万人が、日本でも38万人以上が死亡しました。

当時の日本の人口は現在の半分ですから、現在同じことが起こったら80万人近くが亡くなる計算になります。

しかし、2009年春から出現した豚由来の新型インフルエンザでは、診断や治療法の向上もあってそのような大きな被害は出ていないようです。
 


患者さんの咳(せき)やくしゃみは、インフルエンザウイルスを多数含んだしぶき(飛沫(ひまつ))を周囲にまき散らします。

冬の乾燥した空気中ではウイルスを包む水分が蒸発しやすく、ウイルスが身軽になって浮遊し、周囲の人がそれを吸い込んでしまいます(飛沫感染)。

ウイルスが身軽になるほど気道の奥まで吸い込まれます。

冬にインフルエンザが流行するのはウイルスが身軽になりやすいからであり、これも爆発的に流行する理由のひとつです。
 


吸い込まれたインフルエンザウイルスは、自分の体の表面のヘムアグルチニンというスパイクで気道の粘膜に吸着し、細胞に侵入します。

侵入したウイルスは細胞の仕組みを利用して自分の遺伝子を増殖させ、自分と同じ姿の子どもをたくさんつくります。

生まれた子どもは細胞の外へ出て、まだ感染していない細胞へ感染し、同じように自分の子どもを多数複製します。
 
ウイルスが細胞の外へ出る時に役立つもうひとつのスパイクをノイラミニダーゼといいますが、後で述べるインフルエンザウイルスに直接効く薬は、このノイラミニダーゼのはたらきを抑えてしまうのです。

それ以外にもインフルエンザウイルスが感染する仕組みを抑えてしまう薬が多数、開発されつつあります。



(続く)

posted by ホーライ at 15:41| 感染症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

肺炎とはどんな感染症か?

●肺炎とはどんな感染症か

肺炎は、肺胞性(はいほうせい)肺炎と間質性(かんしつせい)肺炎に大別されます。

原因別死亡率では、肺炎は4位に位置しており、肺炎で死亡する人の92%は65歳以上の高齢者です。
 

原因となる病原体(病因微生物)などの種類により、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎、真菌性(しんきんせい)肺炎、寄生虫肺炎などに分類されます。

 
病理形態学的な分類では、大葉性(だいようせい)肺炎(肺炎球菌、クレブシエラ)と気管支肺炎(黄色ブドウ球菌、嚥下性(えんげせい)肺炎‐高齢者や脳血管障害のある人に多い連鎖球菌性(れんさきゅうきんせい)肺炎など)に分かれます。
 
患者さんの背景による分類では、市中(しちゅう)肺炎(在宅肺炎)、院内肺炎に大きく分けられます。


市中肺炎は通常の社会生活を営んでいる人にみられる肺炎です。

一方、院内肺炎は入院している患者さんが基礎疾患(糖尿病、がん、エイズ、外科的手術後など)や治療(副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬など)により感染しやすくなり、病院内で感染した肺炎です。
 

院内肺炎ガイドライン(2008年改訂)では、生命予後予測因子5項目((1)悪性腫瘍または免疫不全、(2)血中酸素濃度、(3)意識レベル、(4)年齢(70歳以上)、(5)脱水)とCRP(C反応性蛋白)20mg以上などが重視されています。



(1)細菌性肺炎
 
肺炎のなかで最も頻度の高いものです。かぜ症候群に引き続き起こる市中肺炎では、肺炎球菌、インフルエンザ菌、連鎖球菌(とくにミレリグループ)によるものが多くなっています。

慢性気管支炎、びまん性汎細気管支炎(はんさいきかんしえん)、気管支拡張症などをもつ患者さんには、インフルエンザ菌、肺炎球菌、モラキセラ(ブランハメラ)、緑膿菌(りょくのうきん)による肺炎の頻度が高くなっています。
 

院内肺炎では、発症前に抗菌薬が使用されていると、MRSA(メチシリン耐性黄色(たいせいおうしょく)ブドウ球菌(きゅうきん))などの耐性菌やマクロライド系抗菌薬・ニューキノロン系薬耐性菌の頻度が高くなります。
 
原因別の特徴は以下のようになっています。

・肺炎球菌性肺炎:市中肺炎の起炎菌としての頻度が最も高い。

・インフルエンザ菌性肺炎:慢性気道感染患者の気管支肺炎としてみられる。

・黄色ブドウ球菌性肺炎:気管支(巣状(そうじょう))肺炎の代表的な原因菌。

・レジオネラ肺炎:クーリングタワーの稼働時期に集団発生がみられる。

・クレブシエラ肺炎:高齢者、アルコール多飲者に発症しやすい。

・緑膿菌性肺炎:院内肺炎の代表的菌種で、化学療法歴の長い症例では、緑膿菌の持続感染がみられる。



(2)マイコプラズマ肺炎

15〜25歳の若年者に比較的多く、頑固な乾いた咳(せき)がみられます。



(3)クラミジア肺炎

鳥類との接触歴のある人に多く、高熱、乾いた咳、頭痛、筋肉痛などがみられます。


(4)ウイルス性肺炎
 
肺炎を起こすウイルスは、呼吸器系ウイルス(向肺性(こうはいせい)ウイルス)の頻度が高く、インフルエンザウイルスがその代表です。

これに引き続く細菌の二次感染(肺炎球菌、インフルエンザ菌)による肺炎(インフルエンザ後肺炎)がほとんどです。




●肺炎の症状の現れ方

発熱、全身倦怠感(けんたいかん)、食欲不振などの全身症状と、咳、痰、胸痛、呼吸困難などの呼吸器症状がみられます。

肺炎球菌性肺炎では悪寒(おかん)、発熱、頭痛、咳、痰を5大症候とし、そのほか頭痛、全身倦怠感、食欲不振などの全身症状がみられます。
 
痰は粘性膿性から、のちに特異的なさび色の痰になります。

肺炎の重症度は、呼吸困難の程度、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青色になる)の有無、意識障害の有無などにより判断されます。



●肺炎の検査と診断

検査所見としては、白血球増加、CRP高値などの炎症反応が特徴的です。

胸部X線検査では、気管支内空気(エアブロンコグラム:気管支空気像)や肺胞空気像を伴う浸潤(しんじゅん)陰影がみられます。

間質性陰影はウイルス、マイコプラズマ、クラミジア肺炎にしばしばみられ、すりガラス、網状、粒状陰影を示します。

ウイルス性肺炎では異形(いけい)リンパ球の出現がみられ、マイコプラズマ肺炎では寒冷凝集反応が上昇します。
 
痰の検査をして、肺炎の原因菌を探します。

膿性痰(うみ状の痰)では細菌感染症が疑われます。

細菌培養検査、グラム染色、痰の染色所見、血清診断(抗体価)以外に、肺炎球菌やレジオネラの尿中抗原検出キットによる迅速診断ができます。




●肺炎の治療の方法

化学療法が主ですが、補助療法(免疫グロブリン製剤やG‐CSF製剤や好中球エラスターゼ阻害薬など)や呼吸管理なども重要です。

体力の弱っている高齢者では、口から薬をのむことができず、逆に食欲不振が増して誤嚥性(ごえんせい)肺炎を併発し、症状を悪化させることがあるので、即効性があり確実な抗生物質の経静脈的(血管注射)投与が行われます。

●化学療法
 
肺への移行がよい薬としてマクロライド、クリンダマイシン、テトラサイクリン、リファンピシン、ニューキノロン系薬剤、アミノ配糖体系抗菌薬があります。

肺炎球菌、連鎖球菌では、ペニシリン、マクロライド、セフェム系抗生物質が効果的です。
 
黄色ブドウ球菌は近年MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が増加しており、多剤に耐性ができている(薬が効かない)場合、バンコマイシンが使用されます。

マイコプラズマ肺炎ではテトラサイクリン系、マクロライド系抗生物質が有効です。


●一般療法、補助療法
 
全身の栄養状態の改善、痰が出にくい時の療法、脱水に対する処置、低酸素血症に対する酸素療法などが必要です。

人工呼吸管理を必要とする場合もあります。



以上


posted by ホーライ at 10:00| 肺炎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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