2014年08月10日

クローン病とは?(超入門編)

●どんな病気か

小腸、大腸を中心とする消化管に炎症を起こし、びらんや潰瘍を生じる慢性の疾患です。

症状は、腹痛、下痢、下血、体重減少、発熱などです。

20代に最も多く発症しますが、ほかの年代にもみられます。

欧米に多く、日本では比較的少ない疾患ですが、最近患者数が増えています。

潰瘍性大腸炎と似ている点も多く、2つをまとめて炎症性腸疾患と呼びます。



●クローン病の原因は何か

遺伝的要因とそれに基づく腸管での異常な免疫反応のためとされていますが、解明されていません。

食生活の欧米化によって患者数が増えているといわれ、食物中の物質や微生物が抗原となって異常反応を引き起こすことが、原因のひとつと考えられています。



●クローン病 症状の現れ方

下痢、腹痛、発熱、体重減少、全身倦怠感がよくみられます。血便はあまりはっきりしないこともあり、下痢や下血が軽度の場合、なかなか診断がつかないことがあります。

口腔粘膜にアフタ(有痛性小円形潰瘍)や小潰瘍がみられたり、痔、とくに痔瘻や肛門周囲膿瘍といわれる難治性の肛門疾患を合併したりすることがあります。

また消化管以外の症状として、関節炎、皮膚症状(結節性紅斑、壊疽性膿皮症など)、眼症状(ぶどう膜炎など)を合併することがあります。



●クローン病の治療法

検査と診断

潰瘍性大腸炎と異なり、炎症は口腔から肛門までの消化管全体に起こりえますが、最も病変が生じやすいのは回盲部(小腸と大腸のつながるところ)付近です。

病変が小腸のみにある小腸型、大腸のみにある大腸型、両方にある小腸大腸型に分類されます。

クローン病の病変は、非連続性といわれ、正常粘膜のなかに潰瘍やびらんがとびとびにみられます。

また、縦走潰瘍(消化管の縦方向に沿ってできる細長い潰瘍)が特徴的で、組織を顕微鏡で見ると非乾酪性類上皮細胞肉芽腫といわれる特殊な構造がみられます。

大腸内視鏡検査、小腸造影検査、上部消化管内視鏡検査などを行い、このような病変が認められれば診断がつきます。

血液検査では炎症反応上昇や貧血、低栄養状態がみられます。




クローン病の治療の方法

薬物療法として、5−アミノサリチル酸製剤(サラゾピリン、ペンタサ)、ステロイド薬を使用します。

食べ物が原因のひとつとして考えられているため、栄養療法も重要で、最も重症の時には絶食と中心静脈栄養が必要です。

少しよくなってきたら、成分栄養剤(エレンタール)という脂肪や蛋白質を含まない流動食を開始します。

成分栄養剤は栄養状態改善のためにも有効です。


炎症が改善し普通食に近いものが食べられるようになっても、脂肪のとりすぎや食物繊維の多い食品は避けます。

腸に狭窄や瘻孔(腸管と腸管、腸管と皮膚などがつながって内容物がもれ出てしまう)を生じたり、腸閉塞、穿孔、膿瘍などを合併したりした場合、手術が必要となることがあります。

インフリキシマブ(レミケード)は、抗TNF−α抗体製剤といわれる薬剤で、高い活動性が続く場合や瘻孔を合併している場合にとくに有効です。

アザチオプリン(イムラン)などの免疫調節薬も使用することがあります。




クローン病に気づいたらどうする

長期にわたって慢性に経過する病気であり、治療を中断しないことが大切です。

治療の一部として日常の食事制限が必要なことが多く、自己管理と周囲の人たちの理解が必要です。

症状が安定している時には通常の社会生活が可能です。

厚生労働省の特定疾患に指定されており、申請すると医療費の補助が受けられます。





●クローン病は、1932年に米国の医師クローンによって最初に報告された、小腸や大腸に慢性の炎症や潰瘍ができる病気です。

北米やヨーロッパに多い疾患ですが、日本でも増加傾向にあり、2007年の登録患者数は約2万7000人となっています。

20歳前後の若年で発症することが多く、緩解と再燃を繰り返します。根本的な治療法はありませんが、多くの場合、緩解状態に導入しこれを維持することが可能です。

 
クローン病の治療は、腸管に起こっている炎症を抑え、症状の軽減を図り、栄養状態を改善させるための薬物療法と栄養療法が中心となります。

経鼻チューブを自己挿入し、夜間就寝中に成分栄養剤を注入する在宅経腸栄養療法を行うこともあります。

 
狭窄、穿孔などを生じた場合は手術が必要になりますが、術後の再発などの問題があり、最近ではできるだけ内科的な治療を続け、手術が必要な時もなるべく小範囲の切除や狭窄形成術にとどめるのがよいと考えられています。

 
抗TNF−α抗体製剤(レミケード)はクローン病の炎症と深く関わっているTNF−αという炎症伝達物質(サイトカイン)と結合し、その作用を阻害する新しいタイプの薬剤で、強い炎症が続く場合や、とくに難治性の瘻孔がある場合に用いられます。

アザチオプリン(イムラン)などの免疫調節薬がしばしば併用されます。

 
以上


posted by ホーライ at 01:50| 消化器系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月29日

胃・十二指腸潰瘍とは

●胃・十二指腸潰瘍とは


潰瘍とは、粘膜がただれて炎症を起こしてできる、深くえぐれたような傷のことをさします。

40歳以上の人に多い胃潰瘍は胃にでき、10〜20代の若者に多い十二指腸潰瘍は、十二指腸にできたものをいいます。

どちらも、胃酸の影響を受けてできるので、消化性潰瘍と呼ばれます。

胃・十二指腸潰瘍の原因のうち、最も多いのがピロリ菌です。

それ以外の原因として注意しなくてはいけないのが、アスピリンなどに代表される非ステロイド性消炎鎮痛薬です。

リウマチや風邪の治療に使用されているのですが、この薬に由来する潰瘍は腹痛などの自覚症状を伴わないために、治療を受けないまま悪化し、治りにくい潰瘍に移行してしまうことが多いのです。

自覚症状として最も多いのは、上腹部痛です。

胃潰瘍では食後に、十二指腸潰瘍では空腹時によく起こります。

重症化すると、吐血や下血が起こります。

疑いがある場合は、速やかに消化器の専門医を受診しましょう



●胃・十二指腸潰瘍とは?

どんな病気か

胃酸の影響を受けて潰瘍を形成するものを総称して消化性潰瘍と呼んでいます。

消化性潰瘍の代表は、胃潰瘍と十二指腸潰瘍です。

 
胃潰瘍は、40歳以降の人に多くみられるのに対し、十二指腸潰瘍は10〜20代の若年者に多くみられます。

十二指腸潰瘍の患者さんは、過酸症であることが圧倒的に多いのですが、胃潰瘍の患者さんは、胃酸の分泌は正常かやや少なめの場合がほとんどといわれています。

 
胃の粘膜に炎症が生じると、胃の粘膜は多かれ少なかれ障害を受けます。

この時、粘膜が深くえぐり取られたものを"潰瘍"と呼んでおり、浅い変化しか生じなかったものを"びらん"と呼んでいます。

 
びらん性胃炎というのは、腹痛などの症状が胃潰瘍と同じように現れますが、回復は早く、症状は数日で消え、内視鏡で観察すると胃炎の所見も1〜2週であとかたもなく消えてしまうことが多いといわれています。

これに対して、胃潰瘍は症状が長く続きますし、潰瘍が治癒するのに2〜3カ月もかかります。



●胃・十二指腸潰瘍の原因は何か

胃・十二指腸潰瘍の成因のうち、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)に由来するものが十二指腸潰瘍で95%、胃潰瘍で70%前後とされています。

ピロリ菌以外の成因として重要なのは、薬剤、とくに非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs:エヌセッド)です。

アスピリンが最も有名ですが、日本ではアスピリン以外でも多数のエヌセッドが関節リウマチやかぜなどの治療に使用されています。

 
これらの薬剤は、胃酸から胃粘膜を守るうえで重要な役目をしているプロスタグランジンの合成を抑制する作用をもっています。

そのため、エヌセッドを服薬すると、胃の防御機構が障害され潰瘍を形成するのです。

エヌセッドに由来する潰瘍の特徴は、上腹部痛などの症状を伴わない例が多いので、治療を受けないまま悪化して出血を起こしたり、難治性の潰瘍に移行する例が多いといわれています。

 
現在、ピロリ菌とエヌセッドが胃・十二指腸潰瘍の2大成因といわれており、それ以外の原因によるものは、日本では5%を切るくらい少ないことが明らかになってきています。

したがって、ピロリ菌とエヌセッドに対する対策が確立されると、胃・十二指腸潰瘍の治療および予防が飛躍的に進歩すると考えられます。



●胃・十二指腸潰瘍 症状の現れ方

自覚症状で最も多くみられるのは上腹部痛です。十二指腸潰瘍では、空腹時痛がよくみられ、とくに夜間にしばしば起こります。

胃潰瘍では、食後30分から1時間たったあとの上腹部痛がよくみられます。


しかし、すべての胃・十二指腸潰瘍の患者さんに上腹部痛が現れるわけでなく、20〜30%では痛みが出現しないことに注意する必要があります。

とくにエヌセッド由来の潰瘍の場合は、上腹部痛が出にくいことが明らかになっています。


潰瘍からの持続的な出血があると、吐血(胃酸と混じるためコーヒーの残りかす様のことが多い)または下血(タール便と呼ばれる海苔のつくだ煮様の黒っぽい便としてみられることが多い)として症状が現れてきます。

出血症状が現れた場合は、急を要することが多いので、病院を早急に受診してください。

そのほか、むねやけ、吐き気、嘔吐などがみられることがあります。

食欲は、吐き気が強い時を除けば落ちてくることはむしろ少ないといわれています。




●胃・十二指腸潰瘍の治療法

検査と診断

 胃・十二指腸潰瘍の診断に最も重要な検査は、バリウムによるX線造影検査と内視鏡検査であり、この2つの検査により診断は容易につきます(図18)。

@X線造影検査

 バリウムを服用後、体位をいろいろ変えながら撮影します。潰瘍部位にバリウムがたまるため、ニッシェと呼ばれる特有の像を示します。そのほか、間接症状として胃や十二指腸の変形がみられることがあります。十二指腸球部の変形は、クローバー状や歯車状を示すことがあり、タッシェと呼ばれています。

A内視鏡検査

 胃・十二指腸潰瘍の診断において内視鏡検査で得られる情報量は、X線検査の数倍以上といわれています。バリウム検査よりつらい検査ですが、被曝の可能性はないので繰り返し受けることができます。内視鏡観察下で組織の一部を採取して調べる生検を行うことがあります。主として胃がんとの鑑別のためなのですが、ピロリ菌の診断を目的とした生検が最近は増えてきています。

胃・十二指腸潰瘍の治療の方法

 胃・十二指腸潰瘍の治療は、大きく3つの時代に分けて考えることができます。


●第1期「生活習慣病の時代」

 第1期は1980年以前で、治療は安静を保つことと胃に負担をかけない食事をとることが基本であり、それに加えて薬剤療法が行われていました。この当時の薬剤療法は、胃酸を中和する制酸薬や胃酸分泌を抑制する抗コリン薬が攻撃因子抑制薬として使用され、胃粘膜防御因子増強薬と呼ばれる薬剤と併用していました。この療法は一見理想的な治療法にみえますが、実質的な効果を伴っていなかったのです。


●第2期「治療革命の時代」

 第2期は、ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)の登場によって幕を開けます。この薬剤は、塩酸を分泌する壁細胞のヒスタミンH2受容体に作用して、胃酸の分泌を抑制できる画期的なものでした。これまで、どの薬剤によっても成し遂げられなかった夜間の酸分泌をほぼ完璧に抑制することができ、胃内の平均pHを確実に上昇させることができました。腹痛などの自覚症状は、1週以内に90%以上の患者さんで消失し、潰瘍も8週以内に80%以上の治癒率を示すことが明らかになったのです。

 その後、プロトンポンプ阻害薬(PPI)という究極の酸分泌抑制薬が開発されました。PPIは、壁細胞における受容体を経由して酸を産生するプロトンポンプそのものに作用し、酸をつくることを直接止めてしまいます。したがって、PPIはすべての酸分泌刺激に対して抑制を行うことが可能な薬剤なのです。PPIを使用すると、胃・十二指腸潰瘍の90%以上が8週以内に治ることが明らかになってきました。

 胃・十二指腸潰瘍が治癒したあと、何も治療をしなければ、1年以内に約70%が再発を起こします。そのため、潰瘍治癒後も、H2ブロッカーや防御因子増強薬による維持療法と呼ばれる潰瘍再発予防のための薬剤投与が行われていました。維持療法を行うと、1年の再発率が10〜20%くらいにダウンすることが知られています。


●第3期「原因療法の時代」

 ピロリ菌の除菌療法により、維持療法なしでも1年後の胃潰瘍の再発率は10%、十二指腸潰瘍は5%と極めて低く抑えられることが日本でも明らかになりました。

 胃・十二指腸潰瘍のもうひとつの原因であるエヌセッドの服用による胃・十二指腸潰瘍の治療については、エヌセッドの服用を中止することが原因療法になります。しかし、関節リウマチなどの患者さんでは中止できないことが多く、そのため原因療法に準じる治療法として、エヌセッド投与によって減少する胃粘膜プロスタグランジンを補充する、プロスタグランジン誘導体の投与が行われます。

 このように、胃・十二指腸潰瘍の治療はこの20年の間にすっかり様変わりしてきました。昔は、夏目漱石など胃・十二指腸潰瘍で亡くなった人も多かったのですが、今では治療法が確立されてきたため、昔のように恐ろしい病気ではなくなりつつあります。

胃・十二指腸潰瘍に気づいたらどうする

 胃・十二指腸潰瘍の疑いのある時は、早急に医師の診察を受けてください(できれば消化器専門医)。なかでも、強い上腹部痛を伴う場合は胃・十二指腸潰瘍の穿孔(孔があく)が考えられますし、吐血や下血を伴う場合は、胃または十二指腸粘膜からの出血が考えられますので、至急救急外来を受診してください。


以上
posted by ホーライ at 23:31| 消化器系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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