2014年06月26日

脊髄小脳変性症とは?

1.脊髄小脳変性症とは

歩行時のふらつきや、手の震え、ろれつが回らない等を症状とする神経の病気です。

動かすことは出来るのに、上手に動かすことが出来ないという症状です。

主に小脳という、後頭部の下側にある脳の一部が病気になったときに現れる症状です。

この症状を総称して、運動失調症状と呼びます。

この様な症状をきたす病気の中で、その原因が、腫瘍(癌)、血管障害(脳梗塞、脳出血)、炎症(小脳炎、多発性硬化症)、栄養障害ではない病気について、昔は、原因が不明な病気の一群として、変性症と総称しました。

病気によっては病気の場所が脊髄にも広がることがあるので、脊髄小脳変性症といいます。

脊髄小脳変性症は一つの病気ではなく、いろいろな原因でおこる、この運動失調症状をきたす変性による病気の総称です。

よって、その病気の原因も多岐に及びます。

現在では、脊髄小脳変性症の病気の原因の多くが、わかってきています。

しかし、一部まだ原因の解明されていない病気も残されています。

これらの病気の解明には多くの患者さんのご協力を必要とします。





2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

多系統萎縮症という病気では、病型により程度は異なりますが、運動失調症が、その症状の中心になる場合があります。

そこで多系統萎縮症の一部も脊髄小脳変性症とされます。

この多系統萎縮症を含めて、脊髄小脳変性症の患者さんは、全国で3万人を超えています。

その中で、遺伝歴のない脊髄小脳変性症(多系統萎縮症とかオリーブ橋小脳萎縮症といわれます)が最も多く、約2/3をしめます。

1/3は遺伝性の脊髄小脳変性症です。

遺伝性の脊髄小脳変性症では、それぞれ遺伝子別に番号がついています。

日本で多いのはSCA3、 6、 31型です。

このうちSCA3型はマチャド・ジョセフ病という呼び名で呼ばれます。

歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)はお子さんから、大人の方まで、本邦で比較的、高頻度に認められます。

小児の脊髄小脳変性症のなかで多いのは“眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早発型失調症”(EAOH/AOA1)があります。

成人の遺伝性の脊髄小脳変性症の大多数は原因遺伝子が判明しています。

小児に関しては、種類も多様で、多くの原因遺伝子が同定されています。

しかし、未だ不明な病気も多く存在しています。




3. この病気はどのような人に多いのですか

この病気は接触などで他人にうつる病気ではありません。

約2/3が遺伝性ではありません(孤発性)。

孤発性の場合、生活習慣や食習慣との間に、明らかな関係は知られていません。

また、病気の進行を左右するような食習慣などもありません。

遺伝性の場合は、親子で伝わる優性遺伝を取る病気や、ご兄弟・姉妹でのみ病気がでる劣性遺伝のものが知られています。




4. この病気の原因はわかっているのですか

遺伝性の病気の多くは原因となる遺伝子と、その異常が決められています。

現在は、その原因遺伝子の働きや、病気になるメカニズムに応じて病気の治療方法が研究されています。

脊髄小脳変性症の多くには、遺伝子は異なっていても、それらに共通する異常や病気のメカニズムが認められています。

それらの共通の異常を目標とした治療方法の検討も行われています。全く原因がわからなかった時代とは大きく異なってきています。



5. この病気は遺伝するのですか

脊髄小脳変性症は、遺伝性のものと遺伝性でないものに分けられます。

脊髄小脳変性症の約1/3の方が遺伝性です。

遺伝性のものは、遺伝様式により、優性遺伝性と劣性遺伝性に分かれます。

優性遺伝性の病気は、お子様につたわることがあります。


一方、劣性遺伝性の病気はお子様に伝わることは、まずありません。

遺伝性と、非遺伝性の病気の区別は、多くの方では、症状や画像検査によって可能です。

そのため、症状や画像検査などから、特徴がそろっている場合は、両者の区別のための遺伝子検査は必ずしも必要ありません。

しかし、一部、両者の区別が難しい場合があります。

特に小脳皮質変性症という診断の場合は、症状や画像検査だけでは遺伝性の病気との区別が困難です。

また遺伝性脊髄小脳変性症の正確な病型診断には、遺伝子検査が必要な場合があります。

本症の遺伝子検査は保険適応になっていないので、一部実費負担が必要となる場合があります。




6. この病気ではどのような症状がおきますか

主な症状は、起立や歩行がフラツク、手がうまく使えない、喋る時に口や舌がもつれるなどの症状です。

脊髄小脳変性症では、これらの症状がたいへんゆっくりと進みます。

このような、運動が上手に出来ないという症状を総称して運動失調症と言います。

脊髄小脳変性症として総称されている病気では、それぞれの種類で、運動失調以外にもさまざまな症状を伴います。




7. この病気にはどのような治療法がありますか

多くの脊髄小脳変性症で病気の原因が判明しました。

その原因に基づき、多くの研究者が研究を進めています。

ヒトと同じような機序で同じ症状を出す動物(モデル動物)も作られています。

それらのモデル動物を使って症状の進行を妨げる薬剤も多数報告されています。

しかし、現時点では、残念ながら、それらの薬剤がヒトで有効である事は確かめられていません。

ヒトでの安全性やヒトでの試験の難しさが壁になっています。

また患者さんの数が、高血圧や、糖尿病に比べて少ないことも壁になっています。

日本は、このような患者さんの数の少ない疾患にも、精力的に取り組んでいる国の一つです。

今後、必ず、有効性のある薬剤が開発されることが期待されます。

病気の進行を止める薬の開発には、多くの患者さんのご協力が不可欠です。

現時点では、お困りになっている症状を和らげる治療法が知られています(対症療法と言います)。

運動失調に対して、甲状腺ホルモンの刺激剤である、セレジスト(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン誘導体)が使われます。

その他、足のつっぱり感、めまい感、などに対して、症状に応じて薬で治療します。




8. この病気はどういう経過をたどるのですか

症状は、とてもゆっくりと進みます。

進み方は、同じ病気でも、お一人お一人で差があります。

急に症状が悪くなることはありません。

一般に痛みは伴いません。

病気が進むと、一部では呼吸や血圧の調節など自律神経機能の障害や、末梢神経障害によるシビレ感などを伴うことがあります。

病気が進んでも、コミュニケーションは十分に可能ですし、極端な認知症は伴いません。


以上

posted by ホーライ at 07:00| 中枢系の病気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月22日

アルツハイマー病とはどんな病気か

アルツハイマー病は、1906年にドイツのアルツハイマーによって初めて報告されました。

最初の症例は51歳の女性で、嫉妬妄想(しっともうそう)と進行性の認知症を示し、大脳皮質に広範に特有な変性病変が見つかり、従来知られていない病気であることがアルツハイマーによって報告されたのです。


この症例は初老期の発病でしたが、アルツハイマー病は高齢者に発病するほうが多く、高齢者の認知症では最も頻度が高い疾患で、全体の50〜60%を占めます。
 
アルツハイマー病では、多くは物忘れで始まります。

それが徐々に目立つようになり、見当識(けんとうしき)の障害、判断能力の障害なども加わり、認知症が着実に進行して最後は寝たきりになり、5〜15年の経過で肺炎などを合併して亡くなります。




●アルツハイマー病の原因は何か

アルツハイマー病については、1980年ごろの「コリン仮説」以来の活発な研究にもかかわらず、いまだ原因は不明のままです。

「コリン仮説」というのは、アルツハイマー病の大脳ではアセチルコリンという神経伝達物質が減少しているために起こるという仮説ですが、原因解明には至りませんでした。

しかし、これは治療上大きな貢献をしました。現在、日本で使用されているドネペジル(アリセプト)という薬剤は、アセチルコリンを分解するコリンエステラーゼを阻害することにより、脳内のアセチルコリンを増やす作用をもっています。
 


アルツハイマー病の脳には、ベータアミロイドと呼ばれる蛋白からなる老人斑とタウ蛋白からなる神経原線維変化がたくさん出現し、そのために神経細胞が脱落し、認知症が起こります。

しかし、なぜベータアミロイドやタウ蛋白が脳に特異的にたまるかということに関しては多くのことがわかってきましたが、原因解明にまでは至っていません。
 
また、家族性アルツハイマー病ではいくつかの遺伝子異常が明らかにされていますが、大部分を占める孤発性(こはつせい)(家族に同じ病気の人がいない)のアルツハイマー病では遺伝子異常は明らかではありません。




●アルツハイマー病の症状の現れ方
 
多くは物忘れで始まります。同じことを何回も言ったり聞いたり、置き忘れ・探し物が多くなって、同じ物を買ってきたりするなど記憶障害が徐々に目立ってきます。

それとともに、時や場所の見当識が障害され、さらに判断力も低下してきます。

意欲低下や抑うつが前景に出ることもあります。


 
早いうちは物忘れを自覚していますが、徐々に病識も薄れてきます。

そのうち、物盗られ妄想や昼夜逆転、夜間せん妄(もう)、徘徊、作話(さくわ)などの認知症の行動・心理学的症状(BPSD)が加わることが多く、介護が大変になります。
 

さらに進行すると、衣類がきちんと着られない、それまでできていたことができなくなるなど、自分のことができなくなり、種々の介助が必要になってきます。

また、トイレの場所がわからなくなったり、外出しても自分の家がわからなくなってきます。

さらに、自分の家族がわからなくなり、動作が鈍くなり、話の内容もまとまらなくなります。
 
そして、歩行もできなくなり、食事も自分でできなくなり、全面的な介助が必要になって、ついには寝たきりとなり、肺炎などの合併症で亡くなってしまいます。
 
進行のしかたは人により異なりますが、数年から十数年の経過をとります。



●アルツハイマー病の検査と診断
 
認知症を診断したあと、特徴的な臨床像(多くは60歳以上に起こる記憶障害を中心とする緩やかに進行する認知症、早期の病識の欠如、取り繕いを主体とする特有な人格変化)が診断に役立ちます。
 
補助診断で最も有用な検査は脳画像で、CTやMRIでは海馬(かいば)領域に目立つびまん性脳萎縮、SPECTでは頭頂領域や後部帯状回(たいじょうかい)中心の血流低下が特徴的です。

血液などの一般検査には異常はありません。

髄液検査が行われることもありますが、その際にはベータアミロイドの低下やタウ蛋白の上昇がみられます。
 
最近では早期診断が重視されており、健忘(けんぼう)を中心とする軽度認知障害(MCI)の50〜70%が、のちにアルツハイマー病に進展することが知られているので、この時期に治療的介入をすることが大切です。




●アルツハイマー病の治療の方法
 
薬物療法として現在、使用できるのはドネペジル(アリセプト)等ですが、これは進行を遅くする効果を期待して使用されています。

同じコリンエステラーゼ阻害薬のガランタミンとリバスチグミン等があります。

また、ベータアミロイドをとり除くワクチンの開発が進められています。
 
一方、非薬物療法もいろいろな試みがなされています。

これらも進行を遅くしたり、BPSDを軽減するのに役立つことが期待されています。


以上


posted by ホーライ at 11:17| 中枢系の病気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月11日

統合失調症とはどんな病気か

●統合失調症とはどんな病気か

●統合失調症は脳をはじめとした神経系に生じる慢性の病気である
 
統合失調症は、さまざまな刺激を伝えあう脳をはじめとした神経系が障害される慢性の疾患です。

詳細は不明な部分もあるものの、ドーパミン系やセロトニン系といった、緊張‐リラックスを司る神経系や、意欲やその持続に関連する系列、情報処理・認知に関する何らかの系列にトラブルが起きているといわれています。



●特殊な病気ではなく、100人にひとりくらいの割合でかかっている人がいる
 
世界各国で行われたさまざまな調査により、統合失調症の出現頻度は地域や文化による差があまりなく、およそ100人にひとりは、かかった体験をもっていることがわかりました。

これは、統合失調症が奇病の類(たぐい)ではなく、誰しもが体験しうるような病気のひとつであるということです。



●統合失調症の症状の現れ方

*陽性症状(ようせいしょうじょう)は安心感や安全保障感を著しく損なう
 
急性期に生じる患者さんの感覚は「眠れなくなり、とくに音や気配に非常に敏感になり、まわりが不気味に変化したような気分になり、リラックスできず、頭のなかが騒がしく、やがて大きな疲労感を残す」、あるいは「自分のことが周囲の人に筒抜(つつぬ)けになり、常に人から見張られていて、悪口を言われ非難中傷されている」というような体験のようです。
 
誰も何も言っていないはずなのに、現実に「声」として悪口や命令などが聞こえてしまう「幻聴(げんちょう)」や、客観的にみると不合理であっても本人にとっては確信的で、そのために行動が左右されてしまう「妄想(もうそう)」といった症状が代表的です。
 
これらの症状を「陽性症状」と呼びます。

陽性症状は、安心感や安全保障感を著しく損ない、一度、症状が現れるとそこからの回復過程は緩やかで、十分な時間を必要とします。


*陰性症状(いんせいしょうじょう)は自信や自己効力感を奪う
 
一方、根気や集中力が続かない、意欲がわかない、喜怒哀楽(きどあいらく)がはっきりしない、横になって過ごすことが多いなどの状態として現れるものがあります。

「一見、元気にみえるのに、なぜか仕事や家事が続かない」といわれるような状態です。
 
また、込み入った話をまとめてすることが苦手になったり、会話を快活に続けることに困難を感じたり、考えがまとまらなかったり、話が飛びやすくなったりして、しばしば、自分でいろいろなことを決めて生活を展開していくことが大変難しく感じられます。
 
これらの症状を「陰性症状」と呼びます。

陰性症状は、なかなか症状として認知されづらく、怠けや努力不足とみられてしまう場合があります。
 
陰性症状を「症状」と理解して対応しなかった場合は、生活上のさまざまな失敗や挫折を招くことが多く、生活をしていく自信や「自分はやれている」といった自己効力感を損ないやすくなります。

これが、リハビリテーションをしたり、社会生活を維持するうえで要点となるところです。



●統合失調症の治療方法

*薬物療法の進歩は目覚ましい
 
統合失調症の症状が、ドーパミン系やセロトニン系といった神経系で作用している神経伝達物質のアンバランスと関連が深いことが認められて以来、多くの治療薬が開発されてきました。とくに近年、第2世代の抗精神病薬と呼ばれる治療薬が開発され(リスパダール、ジプレキサ、ルーラン、セロクエル、エビリファイなど)、より好ましい成果をあげつつあります。
 
これらの薬の特徴は、陽性症状に効果があるばかりでなく陰性症状にも効果があるといわれていることと、錐体外路(すいたいがいろ)症状と呼ばれる、手の震えや体のこわばりといった生活に支障を起こしやすい副作用が少ないことです。
 
また、使用方法として、(1)原則として、1種類の薬で処方し、同じような効き目の何種類もの薬を重ねてのむような方法はとらないこと、(2)「適用量」があり、多量の処方は、副作用ばかりが増えて効果が増えるわけではなく、意味がないことが明らかにされています。
 
日本では、かつて多種類の薬物を大量に処方する習慣がありました。第2世代の抗精神病薬は、このような処方の方法論にも影響を与えています。



●統合失調症の予後について

長期予後では50%以上の人が回復したり軽度の障害のみですんでいる
 
以前から「統合失調症は予後不良である」とか、「人格が荒廃(こうはい)することがある」などといわれてきましたが、研究の成果は必ずしもそれを示していません。
 
チオンピ博士が1976年に行った30年の長期予後調査では、「回復」と「軽度」の障害の状態と判断された人が併せて49%にのぼっています。

別の調査では、初回入院のあと5年間安定した生活を続けられた人の場合、68%がこの予後良好群に入るとの結果もあります。
 
さらに、適切な薬物療法とリハビリテーションが行われた場合は、回復の度合いはさらに良好です。



ハーディング博士が1987年に実施した30年長期予後調査によれば、適切な薬物療法とリハビリテーションの組み合わせで40%の人が過去1年間に就労経験をもち、68%の人でほとんどの症状が消失し、73%の人が充実した生活を送っていると答えました。
 
病は時として、自尊心や生活に対する興味をも失わせてしまいます。

病を抱えながらも生活を維持していくことを大切に考え、地域社会のなかで医療や生活支援などを受けながら、周囲の人々との適切な関わりが交わされることで、再び社会のなかで人生を積極的に生きていくことができるのです。


以上


タグ:統合失調症
posted by ホーライ at 07:37| 中枢系の病気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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