小腸、大腸を中心とする消化管に炎症を起こし、びらんや潰瘍を生じる慢性の疾患です。
症状は、腹痛、下痢、下血、体重減少、発熱などです。
20代に最も多く発症しますが、ほかの年代にもみられます。
欧米に多く、日本では比較的少ない疾患ですが、最近患者数が増えています。
潰瘍性大腸炎と似ている点も多く、2つをまとめて炎症性腸疾患と呼びます。
●クローン病の原因は何か
遺伝的要因とそれに基づく腸管での異常な免疫反応のためとされていますが、解明されていません。
食生活の欧米化によって患者数が増えているといわれ、食物中の物質や微生物が抗原となって異常反応を引き起こすことが、原因のひとつと考えられています。
●クローン病 症状の現れ方
下痢、腹痛、発熱、体重減少、全身倦怠感がよくみられます。血便はあまりはっきりしないこともあり、下痢や下血が軽度の場合、なかなか診断がつかないことがあります。
口腔粘膜にアフタ(有痛性小円形潰瘍)や小潰瘍がみられたり、痔、とくに痔瘻や肛門周囲膿瘍といわれる難治性の肛門疾患を合併したりすることがあります。
また消化管以外の症状として、関節炎、皮膚症状(結節性紅斑、壊疽性膿皮症など)、眼症状(ぶどう膜炎など)を合併することがあります。
●クローン病の治療法
検査と診断
潰瘍性大腸炎と異なり、炎症は口腔から肛門までの消化管全体に起こりえますが、最も病変が生じやすいのは回盲部(小腸と大腸のつながるところ)付近です。
病変が小腸のみにある小腸型、大腸のみにある大腸型、両方にある小腸大腸型に分類されます。
クローン病の病変は、非連続性といわれ、正常粘膜のなかに潰瘍やびらんがとびとびにみられます。
また、縦走潰瘍(消化管の縦方向に沿ってできる細長い潰瘍)が特徴的で、組織を顕微鏡で見ると非乾酪性類上皮細胞肉芽腫といわれる特殊な構造がみられます。
大腸内視鏡検査、小腸造影検査、上部消化管内視鏡検査などを行い、このような病変が認められれば診断がつきます。
血液検査では炎症反応上昇や貧血、低栄養状態がみられます。
クローン病の治療の方法
薬物療法として、5−アミノサリチル酸製剤(サラゾピリン、ペンタサ)、ステロイド薬を使用します。
食べ物が原因のひとつとして考えられているため、栄養療法も重要で、最も重症の時には絶食と中心静脈栄養が必要です。
少しよくなってきたら、成分栄養剤(エレンタール)という脂肪や蛋白質を含まない流動食を開始します。
成分栄養剤は栄養状態改善のためにも有効です。
炎症が改善し普通食に近いものが食べられるようになっても、脂肪のとりすぎや食物繊維の多い食品は避けます。
腸に狭窄や瘻孔(腸管と腸管、腸管と皮膚などがつながって内容物がもれ出てしまう)を生じたり、腸閉塞、穿孔、膿瘍などを合併したりした場合、手術が必要となることがあります。
インフリキシマブ(レミケード)は、抗TNF−α抗体製剤といわれる薬剤で、高い活動性が続く場合や瘻孔を合併している場合にとくに有効です。
アザチオプリン(イムラン)などの免疫調節薬も使用することがあります。
クローン病に気づいたらどうする
長期にわたって慢性に経過する病気であり、治療を中断しないことが大切です。
治療の一部として日常の食事制限が必要なことが多く、自己管理と周囲の人たちの理解が必要です。
症状が安定している時には通常の社会生活が可能です。
厚生労働省の特定疾患に指定されており、申請すると医療費の補助が受けられます。
●クローン病は、1932年に米国の医師クローンによって最初に報告された、小腸や大腸に慢性の炎症や潰瘍ができる病気です。
北米やヨーロッパに多い疾患ですが、日本でも増加傾向にあり、2007年の登録患者数は約2万7000人となっています。
20歳前後の若年で発症することが多く、緩解と再燃を繰り返します。根本的な治療法はありませんが、多くの場合、緩解状態に導入しこれを維持することが可能です。
クローン病の治療は、腸管に起こっている炎症を抑え、症状の軽減を図り、栄養状態を改善させるための薬物療法と栄養療法が中心となります。
経鼻チューブを自己挿入し、夜間就寝中に成分栄養剤を注入する在宅経腸栄養療法を行うこともあります。
狭窄、穿孔などを生じた場合は手術が必要になりますが、術後の再発などの問題があり、最近ではできるだけ内科的な治療を続け、手術が必要な時もなるべく小範囲の切除や狭窄形成術にとどめるのがよいと考えられています。
抗TNF−α抗体製剤(レミケード)はクローン病の炎症と深く関わっているTNF−αという炎症伝達物質(サイトカイン)と結合し、その作用を阻害する新しいタイプの薬剤で、強い炎症が続く場合や、とくに難治性の瘻孔がある場合に用いられます。
アザチオプリン(イムラン)などの免疫調節薬がしばしば併用されます。
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