発作性の呼吸困難、喘鳴(ぜんめい)、咳(せき)を繰り返す疾患で、慢性的な炎症が気道に起こり、気道の過敏性が亢進することがその原因と考えられています。
抗原の吸入、運動、感染、ストレスなどが喘息発作の引き金になります。
吸入ステロイド薬(副腎皮質ホルモン)を中心とした長期の抗炎症治療が必要となります。
空気の通り道の気管や気管支が急につまって息苦しくなり、呼吸のたびにゼーゼー、ヒューヒューという音が聞こえます(喘鳴)。
さらに呼吸が苦くなると横になっていられず、座らなければ呼吸ができなくなります(起座(きざ)呼吸)。
咳や粘着性の強い吐き出しにくい痰も出ます。
このような喘息発作は、通常は一時的なもので、気管支拡張薬の吸人などの治療で、または軽いものでは自然におさまります。
しかし、重い場合は何日も呼吸困難が続き、苦しい思いをすることもあります。
また、発作が突然に起こり、発作と発作の間に症状らしいものがほとんどないことも特徴です。
喘息症状は、炎症を起こした気道がたばこの煙や冷気などさまざまな刺激に対して過敏に反応し、収縮することで誘発されます。気道の炎症が慢性的に続くと、気道の壁が肥厚して内腔が狭くなります。こうなると、どんな治療をしても気道が拡張しなくなり、喘息が難治化することがわかってきました。
●気管支喘息の原因は何か
さまざまな説があり、代表的なものとしてアレルギー説、感染説、自律神経失調説、精神身体要因説などがあります。
はっきりした原因は現時点でもわかっていませんが、近年、喘息症状の原因は気道の炎症と考えられるようになりました。
患者さんの気道の粘膜には、好酸球(こうさんきゅう)、Tリンパ球、肥満細胞を中心とした炎症細胞が集まっており、これらによって気道に炎症が起こっています。
気道に慢性の炎症があると、さまざまな刺激に対して気道の筋肉(気管支平滑筋)が過敏に反応して収縮し、呼吸困難、喘鳴、咳などの症状が現れると考えられます。
気道狭窄(きょうさく)の原因としては、気道の壁のむくみ、気道内の喀痰(かくたん)の存在、気道の壁自体が厚くなることなどがあげられます。
喘息は、アトピー型と非アトピー型に分類されます。
アトピーとは、ダニなどの空気中の環境抗原に対して、アレルギー抗体(免疫グロブリンE(IgE)抗体)を産生する遺伝的な素因です。
アトピー型では産生されたIgE抗体が肥満細胞上に結合しています。
ダニ抗原などの空気中の環境抗原が気道に吸入されると、肥満細胞上でI型のアレルギー反応が起こり、肥満細胞から化学伝達物質が放出されて喘息反応がおこります。
非アトピー型では、環境抗原以外の原因で喘息が起きます。
慢性の気道炎症があることや、気道過敏性が亢進することに関しては、アトピー型と非アトピー型では差がないと考えられています。
そのほか、喘息を悪化させる要因として、激しい運動、ウイルス感染、飲酒、ストレスがあげられます。
激しい運動や飲酒は、肥満細胞から化学伝達物質を放出させやすくします。
かぜなどのウイルス感染は、感染そのものがアトピー発症の誘因になったり、気道過敏性を亢進させて喘息を悪化させたりします。
また、気温の急激な低下、季節の変わりめ、台風接近前、たばこや線香の煙の吸入、満腹状態、女性では月経や妊娠なども喘息発作の誘因になります。
一部の患者さんでは、解熱鎮痛薬などの薬剤や食物により喘息が起こることもあります。
最近は咳のみが慢性的に続く「咳喘息」が増えています。
典型的な気管支喘息の前段階ともいわれ、適切な治療をしないと、その一部は典型的喘息に移行するとされます。
●多様なアレルゲン
喘息のアレルゲンは実にさまざまで、主なものに室内でのちりやほこりがあります。
ふけ、髪の毛、カビ、衣類や食べ物のくず、ペットの毛や分泌物、植物や昆虫などで、これらを室内塵(しつないじん)またはハウスダストと総称しています。
なかでもダニによる喘息がとくに多く、生きているダニも、その死骸もアレルゲンとなります。
季節によって違いますが、室内塵1gに約1000匹いるといわれ、約40種類が知られていますが、アレルギーの病気では、とくにヒョウヒダニが問題になっています。
喘息の原因となる花粉は、スギ、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラなど多種類あり、稲やハウス栽培でのイチゴの花粉でも喘息が起こります。
日本ではカビが繁殖しやすく、これもアレルゲンになります。カビによる喘息は重症化しやすいので注意が必要です。
そのほかアレルゲンになるものに、そば粉、小麦粉、動物の飼料、こんにゃく粉、製材所のおがくず、動物の毛あか、ヒヨコの羽毛、蚕の分泌物やまゆ、サナギ、きのこの胞子などがあります。
また、枕のそばがらや、もみがら、ふとんの羽毛もアレルゲンになります。
そのほか食べ物や薬もアレルゲンになります。
食物性では、卵、牛乳、チョコレート、ピーナツ、魚介類(イワシ、サバ、タコ、イカ、エビ)や野菜(竹の子、ほうれんそう、山の芋、なす)、そば、香辛料、みかんなどです。
●気管支喘息の症状の現れ方
喘息発作は夜間から明け方にかけて起こることが多いようです。
初めはのどがつまる感じがあり、やがて喘鳴がおこり、呼吸が苦しくなってきます。
呼吸困難がひどくなると、横になっていられなくなり、前かがみに座って呼吸しなければならなくなります。
呼吸困難がしばらく続いたあと、咳や痰が出ます。咳はいわゆる空咳(からせき)で、呼吸をさらに苦しくさせます。
痰は透明で粘りけが強く、なかなか吐き出しにくいものです。
重い発作の場合は呼吸困難が激しくなり、かなり持続します。
さらに重症になると、血液中の酸素が不足するため意識を失い、指先や唇が冷たく紫色になるチアノーゼ状態に陥ります。
また脱水状態にもなります。重い喘息発作が24時間以上持続するのを「喘息重積状態」と呼びます。
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