2014年08月17日

虚血性心疾患とは?

●高齢者での特殊事情

米国の65歳以上の高齢者では、その3割の人が狭心症を含めた虚血性心疾患(狭心症、急性心筋梗塞など)の臨床的徴候を示すといわれており、日本でも高齢社会の到来とともにポピュラーな疾患になってきています。

75歳未満では男性に多くみられる病気ですが、75歳以上では男女間の差は少なくなり、85歳以上ではほぼ同じ頻度になります。

また、虚血性心疾患による死亡者の85%は65歳以上であるといわれています。


●狭心症の場合

狭心症のひとつである労作性狭心症は、歩行などの運動や労作によって1〜15分続く前胸部痛、前胸部不快感などが誘発され、安静あるいはニトログリセリンの舌下錠によって数分以内に軽快する経過が特徴的です。

しかし、高齢者では前胸部痛よりは息切れや疲れやすさを訴えることが多くなり、部位も必ずしも胸骨部の痛みではないことがあり、誤診の原因になります。

さらには、胸痛などを伴わない無症候性心筋虚血も、3割程度の人に認められるといわれています。

また、認知症や意識不鮮明のため狭心痛の症状を正確に伝えられない人がいるので注意が必要です。



●急性心筋梗塞の場合

同様に、高齢者の急性心筋梗塞では、典型的な胸痛を訴えるものはその3分の2にすぎず、神経学的症候を示したり、胃腸症状を訴えることが多くみられます。

これらの結果、高齢者は発症から医療機関受診までに、若い層に比べてより長い時間を要してしまい、治療の遅れにつながってしまいます。

高齢者の急性心筋梗塞例では死亡率が高く、肺水腫、心不全、心原性ショックなど重い合併症を起こしたり、心臓ペースメーカーを必要とする伝導障害あるいは心房粗細動などを合併する場合の多いことも知られています。




●治療とケアのポイント

●狭心症の場合

症状、心電図、運動負荷試験などで狭心症の診断(あるいは疑い)がついたら、次に冠動脈造影検査(心臓カテーテル検査)を行うことを検討します。

冠動脈のどこに、何カ所、どんな狭窄病変があるのかを知るために行う検査です。

患者さんの全身状態、理解力、腎機能、あるいは希望(人生観)を加味して検査を行うか否かを決めますが、条件が満たされれば85歳を超える人でも安全に検査することが可能です。



最近の狭心症の検査では心臓カテーテル検査による冠動脈造影のほかに、マルチスライスCTスキャンを用いた冠動脈CTアンギオグラフィ(CTA)も行われるようになってきました。

腕の静脈に造影剤を注入することで冠動脈を映し出すことができるので、カテーテルを体内深くまで入れる必要がなく、外来で検査できます。

冠動脈狭窄の判定能力は心臓カテーテル検査による冠動脈造影に及びませんが、スクリーニング検査として用いられるようになってきました。

 
狭心症の治療は、内科的薬物治療、外科的冠動脈バイパス手術、そしてカテーテルによる冠動脈インターベンション治療(風船による冠動脈拡張術、ステント留置術など)の3種類の治療法から、ひとつあるいは複数を組み合わせて行います。

主治医とよく相談し、病状と患者さんの希望に合った治療法を選択します。

なお、後二者の治療を行うためには、前述した冠動脈造影検査が必須になります。



日常生活では、冠動脈の動脈硬化の進行を防ぐために糖尿病、高血圧、脂質異常症をきちんと管理し、禁煙することが極めて重要になります。

医師に指示されたカロリーや塩分の摂取量を守り、ダイエットにより肥満を解消することも大切です。

それまで安定していた狭心症の症状が急に出やすくなったり、症状が強くなった際には、急性心筋梗塞の前触れ(不安定狭心症)であることがあるので、すみやかに主治医に相談してください。



●急性心筋梗塞の場合

突然、強い胸部痛を訴えて発症する急性心筋梗塞は、発症直後の6時間あまりが治療上の"ゴールデンアワー"と呼ばれています。

この間に、冠動脈の血流を再開させる再潅流療法を行うと一部の心筋を梗塞壊死から救い、患者さんの心機能を保持し、生命の危険(死亡率)を改善しうるのです。

このため、15分を超えて続く胸痛発作がある時には、ただちに救急医療機関を受診することが大切です。



急性心筋梗塞では、年齢、合併症(腎機能の低下、認知症、出血性疾患など)、心筋梗塞の規模と循環動態、発症からの時間経過などを総合的に判断し、保存的治療、冠動脈血栓溶解療法、緊急冠動脈インターベンション治療のなかから治療法を選択します。


保存的治療は、安静、鎮静、酸素吸入、硝酸薬の投与などの一般的治療を行ったうえでCCU(心臓集中治療ユニット)において行われます。

不整脈の監視と治療、ポンプ失調に対する薬物および機械的補助療法、機械的合併症(心破裂、心室瘤形成など)の予防と治療が中心になります。

発症から6時間以内で禁忌がなければ、各施設の状況により冠動脈血栓溶解療法あるいは緊急冠動脈インターベンション治療を行います。



●その他の重要事項

高齢者がCCUなどに入院すると、CCU症候群と呼ばれるせん妄状態を来すことがしばしばあります。

せん妄とは、軽度あるいは中等度の意識障害とともに妄想や興奮、うわ言などが続く状態のことで、病気による苦痛、不安、孤独感などの精神的・肉体的ストレスを背景に現れます。


病棟内で日ごろ慣れ親しんだ家族の顔を見、会話をすることで予防できることもあり、症状が現れても落ち着かせることができます。

こまめに面会することは、高齢の患者さんにとって重要な精神的支えなのです。



以上


posted by ホーライ at 02:25| 心臓の病気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月15日

関節リウマチ(超基礎編)

関節リウマチとは、免疫の異常によって、全身の関節にこわばり、痛み、はれを生じる病気です。

長引くと、関節の変形をきたします。

原因は完全には解明されていません。

初期症状は、関節の痛み、炎症です。

進行して発熱や体重減少などの全身症状が起こると、心膜炎などを起こして予後不良となることもあります。

左右対称に痛みやはれ、こわばりなどの症状が出たら、一度受診しましょう。

治療には、薬物療法、手術療法、リハビリテーションの3つがあります。

薬物療法では抗リウマチ薬などが使用されますが、これは効果が現れるまでに1カ月から半年ほどかかります。

また、痛みを抑えるために、非ステロイド抗炎症薬が長期間使用されます。

関節のこわばりを緩和させるためにも、リハビリテーションは欠かせません。

高齢者ではとくに骨粗鬆症の予防や治療にも注意する必要があります。



●関節リウマチとは?

高齢者での特殊事情

一般に女性に多いのですが、高齢者では性差は縮まります。

高齢者では一般に疾患活動性に対する予後がよい、リウマチ因子陽性率が低い、リウマチ性多発筋痛症のような発症をみることがある、などの特徴があります。

これとは別に、高齢者における関節リウマチ(RA)の病像には罹病期間の長さを反映していることがあり、この場合には、関節の変化、骨粗鬆症が高度で、長期の薬物療法の結果としての臓器障害の合併も多くみられます。

関節リウマチとしての経過が長い例で、時に発熱や体重減少などの全身症状が強く、多発性神経炎、胸膜炎・心膜炎、心筋炎、間質性肺炎などを起こして、予後不良となる場合があります(悪性関節リウマチまたはリウマチ性血管炎)。




●治療とケアのポイント

高齢者の関節リウマチの治療には、以下のような特徴、注意点があります。

@高齢発症の関節リウマチでは、病初期における疾患活動性が高い場合でも、疾患の予後は比較的良好で、治療により寛解する確率が高い。

A治療効果が部分寛解にとどまったとしても、経過のなかで関節機能障害によって日常生活動作の大きな低下を来すに至るのは、一般に発症してから10年前後なので、治療にあたっては患者さんの平均余命を考慮する必要がある。

B長期の罹病をへて高齢に至った患者さんの場合、すでにさまざまな治療が試みられており、高い活動性が持続している場合でも、新たな治療で大きな効果を期待することはできない。

C薬剤の副作用発現の危険性が高いことなどを念頭に置いて薬剤を選択する。

D高齢者ではとくに骨粗鬆症の予防・治療に留意する。




以上


posted by ホーライ at 02:12| 自己免疫疾患 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月10日

クローン病とは?(超入門編)

●どんな病気か

小腸、大腸を中心とする消化管に炎症を起こし、びらんや潰瘍を生じる慢性の疾患です。

症状は、腹痛、下痢、下血、体重減少、発熱などです。

20代に最も多く発症しますが、ほかの年代にもみられます。

欧米に多く、日本では比較的少ない疾患ですが、最近患者数が増えています。

潰瘍性大腸炎と似ている点も多く、2つをまとめて炎症性腸疾患と呼びます。



●クローン病の原因は何か

遺伝的要因とそれに基づく腸管での異常な免疫反応のためとされていますが、解明されていません。

食生活の欧米化によって患者数が増えているといわれ、食物中の物質や微生物が抗原となって異常反応を引き起こすことが、原因のひとつと考えられています。



●クローン病 症状の現れ方

下痢、腹痛、発熱、体重減少、全身倦怠感がよくみられます。血便はあまりはっきりしないこともあり、下痢や下血が軽度の場合、なかなか診断がつかないことがあります。

口腔粘膜にアフタ(有痛性小円形潰瘍)や小潰瘍がみられたり、痔、とくに痔瘻や肛門周囲膿瘍といわれる難治性の肛門疾患を合併したりすることがあります。

また消化管以外の症状として、関節炎、皮膚症状(結節性紅斑、壊疽性膿皮症など)、眼症状(ぶどう膜炎など)を合併することがあります。



●クローン病の治療法

検査と診断

潰瘍性大腸炎と異なり、炎症は口腔から肛門までの消化管全体に起こりえますが、最も病変が生じやすいのは回盲部(小腸と大腸のつながるところ)付近です。

病変が小腸のみにある小腸型、大腸のみにある大腸型、両方にある小腸大腸型に分類されます。

クローン病の病変は、非連続性といわれ、正常粘膜のなかに潰瘍やびらんがとびとびにみられます。

また、縦走潰瘍(消化管の縦方向に沿ってできる細長い潰瘍)が特徴的で、組織を顕微鏡で見ると非乾酪性類上皮細胞肉芽腫といわれる特殊な構造がみられます。

大腸内視鏡検査、小腸造影検査、上部消化管内視鏡検査などを行い、このような病変が認められれば診断がつきます。

血液検査では炎症反応上昇や貧血、低栄養状態がみられます。




クローン病の治療の方法

薬物療法として、5−アミノサリチル酸製剤(サラゾピリン、ペンタサ)、ステロイド薬を使用します。

食べ物が原因のひとつとして考えられているため、栄養療法も重要で、最も重症の時には絶食と中心静脈栄養が必要です。

少しよくなってきたら、成分栄養剤(エレンタール)という脂肪や蛋白質を含まない流動食を開始します。

成分栄養剤は栄養状態改善のためにも有効です。


炎症が改善し普通食に近いものが食べられるようになっても、脂肪のとりすぎや食物繊維の多い食品は避けます。

腸に狭窄や瘻孔(腸管と腸管、腸管と皮膚などがつながって内容物がもれ出てしまう)を生じたり、腸閉塞、穿孔、膿瘍などを合併したりした場合、手術が必要となることがあります。

インフリキシマブ(レミケード)は、抗TNF−α抗体製剤といわれる薬剤で、高い活動性が続く場合や瘻孔を合併している場合にとくに有効です。

アザチオプリン(イムラン)などの免疫調節薬も使用することがあります。




クローン病に気づいたらどうする

長期にわたって慢性に経過する病気であり、治療を中断しないことが大切です。

治療の一部として日常の食事制限が必要なことが多く、自己管理と周囲の人たちの理解が必要です。

症状が安定している時には通常の社会生活が可能です。

厚生労働省の特定疾患に指定されており、申請すると医療費の補助が受けられます。





●クローン病は、1932年に米国の医師クローンによって最初に報告された、小腸や大腸に慢性の炎症や潰瘍ができる病気です。

北米やヨーロッパに多い疾患ですが、日本でも増加傾向にあり、2007年の登録患者数は約2万7000人となっています。

20歳前後の若年で発症することが多く、緩解と再燃を繰り返します。根本的な治療法はありませんが、多くの場合、緩解状態に導入しこれを維持することが可能です。

 
クローン病の治療は、腸管に起こっている炎症を抑え、症状の軽減を図り、栄養状態を改善させるための薬物療法と栄養療法が中心となります。

経鼻チューブを自己挿入し、夜間就寝中に成分栄養剤を注入する在宅経腸栄養療法を行うこともあります。

 
狭窄、穿孔などを生じた場合は手術が必要になりますが、術後の再発などの問題があり、最近ではできるだけ内科的な治療を続け、手術が必要な時もなるべく小範囲の切除や狭窄形成術にとどめるのがよいと考えられています。

 
抗TNF−α抗体製剤(レミケード)はクローン病の炎症と深く関わっているTNF−αという炎症伝達物質(サイトカイン)と結合し、その作用を阻害する新しいタイプの薬剤で、強い炎症が続く場合や、とくに難治性の瘻孔がある場合に用いられます。

アザチオプリン(イムラン)などの免疫調節薬がしばしば併用されます。

 
以上


posted by ホーライ at 01:50| 消化器系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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